マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
「あ、そっちの階段上ったら、スタンドに行ける。上にはゆらがいるから」
「は、はい…」
蓑島くんが指を差す方向を覗く。
離れても体の熱が冷めず、可愛げにこくんと頷いてしまった。
「星月」
「ん?」
「俺から目を離すなよ?」
そう言って、不敵な笑みを浮かべる。
いつもの蓑島くんなんだけど、体の火照りが冷めない今の私にとっては、胸をキュンと打ち抜かれる。
「…しっかり見とけ」
無言で頷く私に、手を上げて速やかに去っていく。
試合はまだ始まっていないのに。
私は…その背中から目を離せずにいた。
それから、私は蓑島くんに言われた通り、階段を上がって、途中自動販売機で飲み物を買ってからスタンドに出る。
グランドでは次の試合に備えてグランド整備が行われていた。
試合と試合の間の時間だからか、行き交う人の人数が多い。
宛もなく歩いていると、遠くの方から私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「星月っ!こっちこっち!」
「…横川さん!」
制服姿に、部員と同じ野球帽を被った横川さんが私を見つけたのか、手を振っている。
手招きされて、そっちに赴いた。