マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
…しかし。
『奇跡』ってやつは、連鎖する。
「…歌!歌、歌!」
「せーのっ…」
サイレンの音が鳴り続ける中。
横で、部員が応援の準備をしていて、慌ただしい中。
彼から目を離せずに立ち尽くしていた私は。
『奇跡』を…見た。
相手ピッチャーが振りかぶって放った初球を。
蓑島くんは、バットを少し引いてフルスイングする。
カン、と爽快な音が響いた。
「あっ…」
音に反応して、誰もが注目する。
その打球は、快晴の空に向かって大きく放たれる。
《しっかり見とけよ?》
彼の放ったさっきの言葉が、頭を過る。
…だから。
見てるって…。
綺麗なアーチを描いて、センターの頭上を遥かに飛び越えて。
フェンスの向こうの芝に落下する。
跳ねたボールは、その芝の上をコロコロ転がっていった。
「嘘…」
サイレンが鳴り止み、球場内はなぜかシーンとなった。
打球の行方を見守っていた審判が、片手を大きくぐるぐると回す。
入った…。
ホームラン…。