マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
ひそひそと部員が呟く中、横川さんが会話に入る。
「違う。思った以上にうちがあっちの球に食らい付けてんのよ。右スライダー対策してたでしょ?…でも、崩れるの早いわね」
「背番号1、出てきそうだな…」
ノーアウト満塁。
この場面で、バッターボックスに出てきたのは、なんと。
蓑島くんだった。
しかし、審判のタイムがかかる。
監督の指示で、ピッチャーがマウンドから降りてベンチへ下がる。
代わりのピッチャーが出てきた。
背番号、1だ…。
「げっ…ここで?」
「まさか、エース投入?だってあっち勝ってんだろ?」
「早くね?」
またしても、部員たちはひそひそ話をする。
「向こうは悠介を警戒してるのよ。さっきの一発見てるから…」
そう言って、横川さんはまたメガホンをグッと握る。
手は震えていて…。
でも、警戒していた背番号1のエースが出て来てしまった。
試合、どうなるんだろう。
バッターボックスの傍に立って相手バッテリーの投球練習を眺めている蓑島くんを、ふと見てしまう。
蓑島くん…。
(頑張って…)
今は祈ってしまうけど。
ちゃんと、見てる。