マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
そんな横川さんの横で、私も必死にメガホンを叩いて声をあげる。
歌い続けて顎も痛いし、喉もかすれてヒリヒリしてきた。
それでも止めない。
さっきから、打球は大きく外れてファールボールが続いていたが。
5球目ぐらいから、スタンドには飛んでこなくなり、ファールを重ねるに連れて、外野フェンスの両端に立っているホームラン判定のためのポールにどんどん近付いていっているような気がする。
「蓑島、粘るな…」
当の本人は、バットを降ろして首を回していた。
まさか…。
《俺から目を離すなよ?》
もう、離せるワケないじゃん。
こんなに必死にさせられて。
ドキドキ…させられて。
蓑島くんは、再びバットを構える。
疲れた表情なんて、見せてない。
むしろ、まだまだといった感じ。
奇跡が起こる予感を。
期待せずにはいられない。
そして、ピッチャーが体勢を崩しかけて投げた球を、力強く鋭さを見せてフルスイングした。
バットに撃ち抜かれたボールは、高い金属音を鳴らす。
南中している太陽に向かって、大きく放物線を描いた。
「…はぁっ?!ま、マジか!」
「嘘だろ…」
そして、ライト側のホームランポールに、ガン!と当たる。
(…もう)
こんなに魅せてくれるなんて。
聞いてないよ、蓑島くん。