マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
「サヨナラ負けもあり得る状況で、そんな弱気でいたらダメ!」
「ご、ごめん、横マネ…」
あまりの勢いに、たじろぐ部員だったが。
一喝した横川さんも、その勢いとは裏腹に、震えていて、不安そうな表情をも見せていた。
「…万が一、同点で乗り切ったとしても、相手チームと違って、うちにはもう投げれるピッチャーがいない…延長戦を戦う力は残されてない…」
弱気はダメと言っていた横川さんが、弱気な一言をもらした。
強気ながらも、横川さん、本当は不安なんだ。
信じているけど、死に物狂いで戦っている選手のことを考えると、たまらないのだろう。
そんな不安を押し殺すかのように、胸の辺りでグッと指を組んで握る。
祈るその手は、震えていた。
「乗りきって…みんな、頑張って…」
横川さんが俯いて祈る中。
私は…。
(………)
思わず、蓑島くんを見てしまう。
「…ねえ、横川さん」
「…ん?何?」
「蓑島くん…何やってんの?」
「え?」
蓑島くんは、ダイヤモンドから離れたセンターの定位置で、マウンドに向かって手を振っている。
「おーい!」って言っているのがわかった。
そしたら、口をパクパクと動かしながら、軽く腕だけ踊って、ピースしている。
それを見たピッチャーの先輩に「このバカ!」と言われていた。