マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
「…悠介えぇぇっ!こんな時に何ふざけてんのよぉぉっ!」
それを一目見た横川さん、瞬間湯沸し器のように、急に怒りだした。
え?え?何?
すると、横川さんの向こうの隣にいる西尾くんも「あはは、またか…」と苦笑いしている。
「蓑島くん、何やってんの?」
私の疑問に西尾くんは答えてくれる。
「あれ、最近の蓑島の持ちネタ。歌って踊る某ドクター芸人のモノマネ。『ヘイヘイピッチャーヘイピッチャー。力が入って足の裏魚の目』って歌ってんだ。マイブームなんだって」
「…は?」
「たまに試合中やっちゃうんだよな…そろそろ審判に怒られるぞ…?」
ため息をつく西尾くんの横で、横川さんが「悠介、バカなのよ!」とプンプンだ。
力が入って足の裏魚の目…?
(………)
…いや、ついやっちゃうんじゃない。
恐らく、わざとやってるんだ。
肩の力を抜かせるために。
空気、読んでないようで読んでる。
何となく…また。
奇跡の予感がした。
でも、それ目立つからやめた方が良いよ。
先輩ピッチャーは、蓑島くんにもう一回「バカ」と言ったあと。
足元の土をならす。
そして、表情を真剣なモノに変えていた。