マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
選手もベンチから下がり、次の試合が始まるため、スタンドも撤収のため横川さんや部員たちが急いで片付けを始めている。
横川さんはまだ泣いていて、泣きながら団旗を外して畳んでいた。
「…あ、横川さん、私トイレ行ってくる」
「行っておいでー」
みんなの輪から外れて一人、スタンド裏のトイレへと向かった。
手を洗って出てくると、自動販売機の前では大人が数人、缶コーヒーを飲みながら談笑している。
「いやー。まさか北甲が公立校に負けるとはな?まさかのジャイキリだろ」
「…あの、蓑島?だっけ?…あいつ、南豊ボーイズの四番だろ?去年、リーグ首位打者だったヤツだぞ?」
「あ!あぁ…確かオールスター選抜に選ばれてたヤツだろ?北甲相手にホームラン二本も納得だな。何で公立校にいるんだろなー」
「あれだけの選手ならどこかしらかお誘いの話来てるだろ。南豊だって全国常連チームなんだし」
「蓑島祭だったなー」
蓑島くん…大人の話題になってる。すごい。
この大人たちは、どこかのOBか、高校野球オタクといったところかな。
サッカーでもいるいる。
凄いな…と、胸を躍らせてその話をこっそり聞いてしまった。