マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様



…蓑島くん、今度は鹿の話を始める。

鹿肉の血抜きの話や、お父さんの友達が鹿肉を食べたら塩梅悪くなって、仕事を一週間休んだクソヤローになったとか。

猟友会やジビエ料理の話もし出した。


蓑島くんは、教室でもよく喋るが。

この熊と鹿の話になると、物凄くベラベラと流暢に一方的に話し出す。


蓑島くん…熊と鹿が好きなの?

…に、しては、愛好しているというよりは、狩りや料理の話ばかり。

動物好き?

それとも、狩りが好きなの?


よくわからない。


…けども、蓑島くんが熊と鹿の話をしている時は、とてもイキイキしていて、楽しそうで。

話の内容がイマイチわからなくても、私も何となく楽しい。



熊の出る田舎とは言えども、住宅街は新しめの綺麗な建物が並んでいて、道路も歩道も広くて綺麗に舗装されている。

人もそんなに歩いてなくて、静かだ。



大きくそびえる、壮大なスキー場の山をバックに、ゆっくりと流れる穏やかな時間の中。

二人で一緒にいられるって、凄い贅沢だなと思った。



「あ、ここ曲がって」


後を着いて行くと、住宅街に入る。

すると、人の話し声が聞こえてきた。

そこだけ活気のある様子で、風に乗せて炭の匂いと煙もやってくる。


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