マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
…でも、私はお礼を言いたい。
こんな私を、ものすごく気に掛けてくれてありがとうって。
グランドを離れて、帰路につく。
私は地元の徒歩通学のため、みんなとは違って正門からではなく、裏道の西出口を使って学校を出入りしている。
正門を背に、反対方向の西出口へと向かった。
歩き進んでいくと、校舎の端にある水呑場から、バシャバシャと水が出る音が聞こえる。
誰か水使ってるんだろうな。
その音を耳にしながら、横を通り過ぎる。
「あ…」
視界に入った姿で、思わず足を止めてしまった。
顔を洗っていたらしく、水の出る蛇口を止めて、持っていたタオルで顔を拭いている。
「ふーっ…」と、タオルから顔を出すと、すぐに目が合ってしまい、存在に気付かれた。
「…ん?…星月?」
「蓑島くん…」
何で、こんなにもタイミング良く…。
驚いて固まってしまうが、蓑島くんは笑顔になり、私の方へとゆっくり寄ってくる。
「星月、今帰り?」
「あ、うん」
「遅くまで頑張るね」
「うん…」
私に向けられる、蓑島くんのいつものキラキラなスマイル。
何度も胸をドキドキさせたけど。
今は…それが、切ない。