マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
夏期講習も終わったその帰りに、近くのパン屋さんへ行き、お気に入りのクロワッサンを買い食いする。
そして、家に到着したのは夕方過ぎ。
その単調な毎日の繰り返しの中で、突然起こった出来事だった。
家に帰ると、珍しく母親が先に帰ってきている。
総合病院の薬局長だかで、いつも帰りが遅いのに。
『…えぇ、うん…うん、こっちはもう受け入れは大丈夫だから。有馬先生も口添えしてくれたの。…うん…』
キッチンで食事を作る手を止めて、電話で話し込んでいるようだ。
そんな母親を横目に、カバンを降ろしてソファーに座り込む。
眠たい…。
『明日、何時にこっちに到着する?…うん、わかった。…車は?空港に置いてある?……』
しかし、母親の会話を盗み聞きしていると、そんな眠気も覚める。
『…うん、わかった。こっちは大丈夫だから、明日安心して帰ってきて。…だから、しっかり気を持って、せづの傍にいなさい。泣いちゃダメ。…』
…星月?
星月のことか?
何を…。
話の内容と母親の話し方が、だいぶ深刻そうなので気になる。
『…じゃあ、明日病院で待ってるから。気を付けて帰ってきて』
母親はそう言って、通話を終えていた。