マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
『うわぁー。パン屋の娘、超可愛くね?』
『胸デカかった。あんな可愛い子が彼女なんて羨ましすぎる…』
『竜堂さんも更に男前になってたなー。横濱流星に負けてねえ』
『やっぱイケメンには可愛い彼女かー』
先ほど出くわした二人の感想を述べながら、だらだらと病院を出る。
雨上がりの風景を見て、ハッと思い出した。
『…やべっ。傘忘れた』
『は?マジ?』
『あんなに廊下ビシャビシャにしといて忘れる?取ってこい!』
『瞳真はやっぱどこかヌケてんなー。イケメンのくせに』
『………』
イケメンは余計だ。
ヌケてねえし。誰にでもある過失だろ。
だなんて思いながらも、傘のある病室前に引き返す。
再び、エレベーターに乗り込んだ。
星月…ケガはヤバいけど、元気そうでよかったな。
一言ぐらいしか話せなかったけど…これをきっかけに、前みたいに話が出来るようになればいいな。
まずは、ひと安心。
そんな事を思いながら、エレベーターを降りる。
…だなんて、世の中そんなに甘くない。
と言うことを、これから思い知らされることになる。
『大丈夫』なワケがなかった。