マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様


先ほど、俺がビシャビシャに濡らした廊下は、すでに水滴が拭かれていて、ピカピカに綺麗になっていた。

さすが病院と、感心しながら星月のいる病室へと向かう。

やがて、病室の前の忘れ物の傘に近付いていた。



(…え?)



しかし、病室の方が何か騒がしい。



『ううぅぅっ…うああぁぁっ…』



号泣ともいえる、泣き声が廊下にまで響いていた。

その凄まじい音量に、傘に伸ばした手がビクッと震えて止まる。



(…星月?)



『わ、わ、私っ、大丈夫なんかじゃないっ…大丈夫なんかじゃないぃぃっ…』

『そうだ。そうだな』

『だ、だ、だって…選抜もっ…高校も、これからなのにっ…もう、ダメだぁぁぁ…』

『星月、それはいい。今はしっかり足を治すことを考えればいいんだ』

『で、でもっ…』



そして、悲痛な泣き声がまた響く。



星月が…泣いている?

竜堂さんの前で…?

しかも、こんなに泣き叫ぶなんて…!



本当は、大丈夫じゃなかったって…!



まさかの事実に、頭が真っ白になってしまった。

思考が奪われ、茫然としてしまう。



(な、何で…)



だって…だって!

俺達の前では、大丈夫だって言ってたじゃねえか…!


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