マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様



なのに…!



泣きまくってとうとう嗚咽しており、そこに優しくもないが宥めるような声かけが聞こえる。



『…ったく、全然大丈夫じゃねえのに、強がってばっかいんじゃねえぞ』

『だって、だって…みんなきっと心配するもんっ…い、言えないよぉぉ…』

『せづちゃん辛かったね、辛かったね?我慢しないで今はたくさん泣こうね?私も一緒に泣くからね?…ううぅぅ…』

『おまえは泣かんでいい。このバカ』



何故かパン屋の娘も一緒に泣くという展開になってしまったが、星月の嗚咽はまだ続いていて。

それを耳にする度に、胸が痛くて。

その痛みに堪えられなくなったかのように、踵を返してこっそりとその場を離れる。

傘はちゃんと手に持っていた。




俺達の…俺の前では、大丈夫って言ってたのに、何で?

…いや、何で俺の前で大丈夫だと言ったんだ?!



俺達、辛いときも共にして…何でも言い合える仲だと、思ってたのに!



(いや…)



…それは、違ったんだ。



何でも言い合える仲は、昔のこと。



なぜ、星月が俺の前で強がったのか。



それは、単に俺が頼りないから…だ。



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