マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
『いらっしゃいませー!…あ、瞳真くん、こんにちは』
店頭にいたのは、店長の苺さんではなく。
その娘。
病院で見た制服姿ではなく、コックコート姿でまさにパン職人だ。
相変わらずアイドル級に可愛い。
『こんちわ』と頭を下げながら、トレイとトングと取る。
選ぶものはもうお決まりクロワッサン二個なので、レジまでの動作は速攻だ。
『クロワッサンがお二つ、260円でーす』
財布を開けて、指で小銭を掻き分ける。
すると、店のドアが鈴を鳴らして開いた。
『…あらっ!…あらあら、瞳真じゃないのー!』
思わず振り返る。
そこには、小刻みに手を振りながらおばさんが俺のもとに駆け寄ってきた。
『杉マネ!』
『うふふ。久しぶりー』
少年団の元マネージャーの杉マネ。
星月の母だ。
『瞳真はおやつを買いに来たの?』
『あ…はい』
『そうなのー!…じゃあ、ちょっと待っててくれる?車だから家まで送ってあげる!』
『え…だ、大丈夫ですよ。それに遠回りになるし』
『いいのいいのー!ちょっと待っててねー!』
…え。そんな急に。
と、思いながらも、さりげなく押しが強いので断りきれず。
杉マネのお買い物をしばらく見守ることとなった。