王子様とブーランジェール
松嶋と桃李がペア…!
しかも、俺の次の順番!
何ですかこの組み合わせ!マジでベタすぎる展開!
二人がイチャこいてるのを背に、この気持ち悪いナイトハイクコースを歩くという…。
…いや、イチャこけるだろうか。
今一度、振り返ると。
「あ、あ、あわわわ…ど、ど、どないせ……」
桃李、真っ青になって、ガタガタと震えていた。
こいつは、お化け屋敷系は一切苦手なのだ。
一人でギャーギャー騒いで勝手に走って逃げ、転んで眼鏡を落とし…。
…あっ。眼鏡気をつけるよう言わねば!
「桃李、大丈夫?」
順番が後ろの黒沢さんに話しかけられる。
桃李は必要以上に体をビクッと震わせていた。
「あ、あ、あ、りみちゃん…やややや…」
「…もう!松嶋、ちゃんと面倒みてよ?」
「まぁーかせんしゃい!りみ委員長!」
そう言って、松嶋はケタケタと笑っている。
ホントに大丈夫か?桃李は並大抵の怖がりじゃないぞ?
「松嶋、ホント桃李はヤバいぞ?」
同じく桃李の怖がりを知っている理人も、松嶋に助言しようとする。
理人は黒沢さんの隣にいる。どうやら、黒沢さんとペアを組むらしい。
さっき、「和田くん、ちょうどよかった。話したいことあるんだ?」と、言われていた。
何のお話?まさかピンクな展開では…。
しかし、この男、松嶋。
とんでもないことを言い出す。
「大丈夫だぜよ和田殿!もしガタガタと震えが止まらないのであれば!拙者が身をまるごと抱きしめてあげようぞ!」
そして、バッと両手を開く。
「桃李。…何ならここで今。抱きしめてやってもいいんだぜ?ハニー?」
そう言って、フフンと不敵に笑う。
なっ…このハレンチ男!
とうとうシッポを出しやがったな!
ハニー?…おまえのハニーじゃねえ!
だが、しかし。
「だ、だ、だ、抱きしめてもらったらお化けが全部消えるというのでしょうか…ま、ま、松嶋は魔法使いですか…」
あまり、ちゃんと取り合ってないようだ。
さすが、桃李。
「なぁーに。抱きしめた後は、二人でベニテングダケを収穫して、網で焼いて食べさせてやる。ロープがぶら下がってたら、おまえも一緒にぶら下げてやるから心配するでない」
「お、お、お、お化け…消えますか…ど、ど、ど、どうなんですか…」
やれやれ。心配あるのかないのかわからない感じになってきた。
松嶋は相変わらずヘラヘラ笑っているが。
まさか、そんな松嶋も真っ青になるような事件が起こるとは、この時は、誰も思いはしなかった…。