王子様とブーランジェール
…のだけれども。
嫌な予感はした。
嫌な予感はしたけれども、大河原さんは仮にも先輩。
だから、断りきれなかったのもある。
だけど、嫌な予感は的中。
後悔してももう遅い。
『竜堂おつかれー!』
指定された時間に野菜巻きの店に行く。
案内されて通された席には、大河原さんと吉原さん。
そして、その隣には…!
『こんばんはー!初めましてー!』
女子が…!
女子が一人。吉原さんの隣に座っていて、俺に手を振っている!
『あ、どうも…』と、一礼をして席に着くが、すぐさま隣の大河原さんに耳打ちした。
『大河原さん、どういうことっすか!吉原さんと三人じゃないんすか?!』
『だって、こいつ、どうしても竜堂と会わせろって言うから…』
『や、やっぱりそういうことですか!あれだけ合コンはしないって…!』
『まあまあカタイこと言うな!…あ、おまえ、帰るなよ?』
そう言って俺の左腕を強く掴む。
やられた…!
大河原さんの罠にまんまとハマってしまった俺。
そんなこんなで乾杯をして会は始まった。
二時間飲み放題。
野菜巻きも出て来て、お酒も進むったら進む。
先輩たち三人の世間話を横で聞きながら、野菜巻きを食べていた。
野菜巻きはうまい。
紅一点で参加した彼女は、大河原さんたちと同じく三年生の女子。
名前は、嵐美央さんというらしい。
黒髪の艶々としたストレートロングヘア。
濃くはないが、目元のマスカラとリップはしっかりと塗っていて。
2つ上なのに、だいぶ大人の女性だ。
服装も黒いTシャツとシンプルだが…Vネックであり。
胸の谷間が見えそうで見えない…。
って、どこを見てるんだ俺。
変態か。
しかし、酒が進むに連れて、そのVネックの谷間をどうしても見てしまう回数が増える。
ダメだダメだ見てはいけない。
そう思ってバッと目をそらすのだが。
酒が頭に廻ってボーッとしてきているせいか、気が付いた時には、また見てしまっていた。
そんな事を繰り返しているうちに、やがて、彼女と目が合ってしまう。
やばっ…。
急に恥ずかしさがピークとなって、思いっきり目をそらした。
気付かれた…!
『おいおい竜堂。さっきからおとなしいって。酒足りねえんじゃねえの?』
『こいつ、さっきからビールばっか飲んでんじゃん!』
大河原さんと吉原さんにいじられる。
大河原さん…今、冷酒注文していた。
日本酒…。
すると、彼女の攻撃が始まった。
『大河原、ちょっとどいてよ』