王子様とブーランジェール
その後、隙をみては理人にいろいろしつこく詮索される。
かなりしつこい。楽しんでいるのが、もろに出てるぐらい。
かなりめんどくさい。
松嶋にも言ったが、DKの純情は見せ物ではない。
しかし、松嶋の出現でかなり振り回されていたが。
『俺はダンナの敵じゃない』
…何だか、拍子抜けする。
この意味をどう解釈するか。
様子みていくしかないのか。
…だが、そんな呑気なことなんて言ってられない展開が、学校に戻ったら待っていることを、今の俺は知らない。
ここから夏休みまで、怒涛の展開が待っている。
絶壁滑落者が出たという、前代未聞の宿泊研修から休養日を1日挟んで、俺達一年生は登校。
学校に戻ると、何てことない普通の日常に戻っていた…かと、思われた。
「宿泊研修、夢のようなひとときだっただろ?」
理人だ。しつこい。
あれから、宿泊研修の話をかなり振ってくる。
何を楽しんでいるかは、知らないが。
「おまえしつこいな。何で人の恋バナ聞いて楽しんでるんだよ」
秒殺した弁当の片付けをして、コンビニで買ったアイスコーヒーをカバンから出す。
理人はまだ弁当を食べており、おかずの鯖の骨を取っていた。
「夏輝のは格段と面白いから。日常のスパイスだよね」
「………」
スパイス…遊ばれてるとしか思えない…。
「夏輝、理人」
そんな昼休みのひとときを過ごしていると。
桃李が突然やってきた。
…昼休みに向こうから話しかけてくるとか、珍しいんだけど。
「食べる?」
紙袋を俺達の前に差し出す。
おっ。これは…!
「昨日休みだから、いっぱい作ったの」
クロワッサンだ。
桃李の作ったクロワッサン!
「食べる食べる。食べるに決まってんだろ」
「桃李ありがとう。ちなみに余ったら全部持ってこいって夏輝が言ってるよ」
「…おまえ!」
「じゃあこれ全部あげる。もう一袋あるから」
そう言って、その紙袋まるごと俺達に差し出した。
おまえ、いくつパン焼いてきたんだ…。
向こうでは、黒沢さんたちがすでにクロワッサンを食べている。
「…この子は天才ですわよー!こんな美味しいクロワッサン作れるだなんてー!!」
突然の大声でびっくりした。
桃李の後ろから、松嶋が急に登場した。
松嶋も手にクロワッサンを持っている。
っていうか、クロワッサンそのまま持ち歩くな。
カスが落ちまくって大変だ。