王子様とブーランジェール
女豹…いや、魔女に犯され。
友達も買収されていて。
俺、何か…哀れじゃね?
もう、ため息しか出ない。
結局、ひとりぼっちとなってしまった俺。
何だかドッと疲れてしまい、よろよろと階段を上がり、一人で教室に戻る。
ちっきしょ…どいつもこいつも。
外には七人の敵がいると松嶋は言っていたが。
今の俺、外にも中にも七人以上の敵がいる。
そんな気分だわ。
やっとの思いで教室に戻る。
しかし、そこで、またしても敵が…!
廊下に立っており、俺の教室に顔を突っ込んでいる。
「神田さん、今度大会終わったら、一緒にお茶しに行きませんか?」
「え?…あの、どこに…」
「神田さんの行きたいところなら、どこへでも!」
「え…え?」
またしても来やがったか…?
ゴリラの高瀬!
出入口を挟み、桃李と話をしている。
…と、いうか、高瀬が一方的に桃李に喋りかけ、桃李が困っているといった様子だ。
高瀬、あれからちょくちょくこの1年3組に来るが。
いつも同じような問答を繰り返している。
ぶっちゃけ、桃李は。
男にデートに誘われ慣れていない。
だから、輪をかけたかのように、高瀬の改まったストレートなお誘いだと、どうしていいかわからないのだろう。
イエスかノーか、どちらかしかないと思うが。
桃李なら、勢いに押されてイエスと言いかねない。
それは、俺が困る。
高瀬のゴリラに先に手を出されてたまるか。
俺、出陣。
「…あーら、センパイ?お疲れ様でーす。動物園はあちらですよー?」
そう言って、二人の間に割って教室に入り、バタン!と瞬時に出入口のドアを閉めてやる。
ショートバージョン。
「…おい!おい!竜堂コラァ!また邪魔しやがって!開けろ!」
閉まったドアを叩いたり、開けようとガタガタと音をたてる高瀬。
ドアを開けてやるまいと、反対にドアを押さえる。
そのうち突っ掛え棒を使用して、開けられないようにしてやった。
「…開けるもんかこのゴリラコラァ!ゴリラはゴリラらしく、メスゴリラとデートせんかい!」
高瀬と面と向かわないことをいいことに、言い合いに参加する。
「…んだと?!…1年のくせに生意気な!」
「おまえみたいなクソゴリラに持ち合わせている敬意なんかねえよ!このクソゴリラ!」