王子様とブーランジェール



同時にもう一発、さっきと同じ箇所に、再度タイキックをどっかりとお見舞いされる。

予想だにしなかった連続襲撃に、思わず「痛いぃっ!」と、叫び声をあげてしまった。

タイキックの反動で、倉庫の外に追いやられる。

あっという間にバシーン!と、倉庫のドアを閉められた。

閉め出された…!



突然の出来事に、一瞬、思考が止まる。

って、止まってる場合じゃない。

何だ。何だ何だ?

なぜ、怒られる?

なぜ、タイキック?!

ケツ痛ぇわ!



「…夏輝!何してんの?遅い!」

あゆりがやってきた。

俺の戻りがあまりにも遅かったため、様子を見に来たんだろう。

「いや…」

先生にタイキック入れられてました。

なんて、言えない…。

「…お尻、痛いの?さっきから擦ってるけど」

「いや…」




二発、蹴りを入れられた部分を無意識に擦っていた。

じんじんとした痛みが続いている。

俺はここらへんは鍛えてるから、この程度だが。

そこらのヤツが食らったら、たぶん、しばらく立てないぞ。

狭山の蹴りと同じぐらい痛い。




しかし。




よりにもよって…桃李の前で!

桃李の前でタイキックとは…!

カッコ悪いところを見せてしまったじゃねえか!

痛いぃっ!って、思わず叫んじまったじゃねえか!

この、薄らハゲが…!(糸田先生のこと)




そんな、たいしたことではない点に、ムキになる。

しかし、たいしたことではない点だが、俺の中ではかなり重要なことであり。

教師に無防備に蹴りを入れられるだなんて、カッコ悪。

叫び声あげるのもカッコ悪。



でも、何でタイキックされてまで、追い出されなきゃならないんだ?




ま、まさか。

先生…中で、桃李にセクハラしてんじゃねえだろな?!

指導と言いながら、どさくさ紛れに!

だから、勝手に入ったらキレやがったのか?

この薄らハゲが…!



憶測は、とんでもないところへ行ってしまった。

…いや、わかっちゃいるんだけどな。





その後、練習は一通り終了したのだが。

倉庫の方は、まだ一通りも終了する気配はない。

道具を片付け、みんなで倉庫の前に持っていったが。



「…全部このヘタレ女にやらせるから、そこら辺に置いておけバカヤロー!」



なぜか、怒っており、ドアを閉めきられた。



そして、それからも、糸田先生の怒声と桃李の汚ない悲鳴が次々と響き渡っている。

いったい、何が繰り広げられているのだろうか…。

悲鳴をあげる事態って、どんな…。



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