王子様とブーランジェール
…まあ、いい。
眼鏡外したら、ダンスどころじゃねえからな?
考え直しとけ!
それに、あんなスリットだらけのミニスカート、パンチラ連発じゃねえか!
あんなものを着せて踊らせる気か!
『やだー。ダンナ、桃李のお父さんみたいー。でもでも。男子は皆、可愛い子のパンチラは見たいものでしょ?だから前列ってのもある』
てめえ!俺の大事な桃李を晒し者にする気か!
性欲の塊DKのエサにする気か!
『…えー?ダンナだってみたいんじゃないのー?桃李のチアガール姿。生足、へそ出し、デコルテ、パンチラ一通り』
(………)
…うるせえ!そんなこと問題じゃねえ!
『…あ、やっぱり見たい?』
いや見たい…じゃなくて!
そうじゃなくて!
あんなキレッキレの早い動きのダンス。
桃李なんかに、絶対無理だからな!
あんなに腰を早く動かせるもんか!
あんなに頭を振ってしまったら、酔ってまたゲロ吐くわ!
すると、松嶋はため息をついた。
『…ダンナ、桃李は頑張ってるよ?』
…は?
『やるって、頑張るって言ってるんだよ?』
桃李が…?
『頑張ってるのにさ、何で応援してやらないの?』
松嶋の顔が、真剣な表情になっている。
どストレートに言われると。
何も反論出来なくなっていた。
『…てーなわけで!チアガールの衣装、楽しみにしててちょーだいっ!』
いつの間にか、松嶋はいつもの調子で去っていった。
…と、いうのが、先週の話。
「…で、動画見る?」
理人はスレッドに上がっている動画を再生していた。
顔を揃えて覗き込む。
再生された動画の真ん中には、ゴールドのラインの入った黒ジャージを着た、ザイル系な格好の松嶋が。
左サイドには、柳川だ。
自分のチームのチアの衣装を着ている。
右サイド…同じ衣装の小学生だ。
バックには、柳川と同じチアの衣装を着た子たちがズラリと並んで踊っている。
しばらく見ていたが。
これ、結構本格的じゃないか?
手練れが踊っているから、そう見えるのかもしれないけど。
松嶋と柳川は振り完璧だ。
桃李がいるべき位置で踊っている小学生も、やたらとキレがあるぞ?
やたらと頭、腰のフリがキレている。
振り付け自体も、みんな全て一緒ってワケでもない。
桃李が一人で踊る場面もあるぞ…!
…桃李にこんなの絶対無理だって!