王子様とブーランジェール
また、マイナス思考のループに陥る…。
なぜ、こんなに引き延ばしてしまったのだろうか。
言い出しづらいとか、そんなんじゃないぞ。
タイミングを失い続けただけだ。
それに…。
『…どっちかはっきりしろよ!おまえがどうしたいのか、ちゃんと言わないから、いつまでもしつこく来るんだろうが!!』
言い方は悪かったが、俺、間違ったこと言ったか?
そこは譲れない部分で。
ここが葛藤している部分といえば、そうかもしれない。
でも、言い方がキツくて泣いてしまったのなら…どうしようもないか。
傷つけたのなら、謝らなければならない。
…これを、延々と考え続けている。
もう、時間が経ってしまって、謝るとかワケわからなくなってる。
桃李だって、忘れてるかもしれない。
でも、一言…一言でいい。
話さえ出来れば…あのときの話もさりげなくして。
で、さりげなく謝れれば、この罪悪感もなくなるのにな。
(うまくいかないもんだな…)
帰りのホームルームの時間に、ボーッと考える。
今日は金曜日で、あっという間に一週間終わり。
桃李のペナルティ入部も、ようやく折り返し地点か。
ったく。桃李が部活にいると思うと、集中できねえ…。
早く終わってくんねえかな、ペナルティ入部…。
そんなことを考えながら、先生の話を聞いていた。
その時だった。
閉めきっていた教室のドアが急にガラッと開いた。
勢いよく開けたのか、ドアはバシーン!と音をたてている。
そのどデカい音に、教室中の全員が思わず注目した。
何だ?何だ!
「こんちくわーっ…って、ダラケながら仙道の話を聞いてんじゃねえよ一年坊主がコラァ!初心を忘れるなバカめ!」
甲高い声でまくし立てながら、登場!
このバカめ!というフレーズ…。
さ、狭山ぁっ?
なぜ、この時間に一年の教室に!
狭山はドカドカと乗り込んでくる。
この、1年3組の中に。
そして、教卓にいる仙道先生の隣になぜかちんまりと並んでいる。
そして、あの獣のような目付きで俺達を見回していた。
「狭山…別に俺はダラケて話を聞かれていてもいいんだけど…ダラケたい時間だしな」
「何を言っておるこの若手が!そんなんだから、生徒にナメられるのだバカめ!」
「若手っても、もう30よ…それに、この時間、おまえの教室には担任の糸田先生が…」
「あんなハゲ構っていたら、学校生活エンジョイできんわ!」
仙道先生、さすが。
狭山への対応も冷静だ。
…じゃない!
何しに来た!狭山!