王子様とブーランジェール
動揺して、思わずそこを突っ込んでしまった…。
何言ってんだよ俺…。
「最初は3Dで挑戦していたんだけど、出力ミスが多くて、うまく出来なかったのです!結局3Dプリンターが故障してたんだけどねーおかげて狭山さんちゴミだらけ!」
「バカめ!あのゴミは全て正晴が丁重にゴミ出ししたわ!…結局!3Dプリンターは親父が毎晩いかがわしいものを作っていたがために故障した…だから、2Dで我慢しろ!」
親父、何作ってたの?
いかがわしいものって何?
しかも、ゴミ出しした正晴って誰?
ツッコミどころは満載ではあるが、そんなことはどうでもいい。
そんなの問題じゃねえ!
いやらしいパネルの登場に、クラスメイトは呆然としている。
みんな、開いた口が塞がっていない。
もちろん、前の席のほうでは、桃李も…口を開けて、パネルに釘付けだ!
…んのやろっ!
頭の中が、怒りでビキビキとしている。
おもむろに席を立ち、狭山や先生のいる教壇へと早足で向かう。
「…お?何だ何だ?私を殺したくなったかバカめ!」
狭山は嬉しそうに俺を挑発する。
ケンカに持ち込もうってか?そうはいかねえぞ?
狭山はおそらく、あの時のリベンジをするべく、あの手この手で俺を怒らせバトルに持ち込もうとしているに違いない。
おまえの思惑にまんまとハマってたまるか!
嬉しそうにニヤニヤしている狭山をスルーして通り過ぎる。
俺が用があるのは、隣にある等身大パネルだ。
俺と嵐さんの…。
…端からはこう見えるのか。
何ともいかがわしい…。
真ん中めがけて、得意の蹴りを突っ込む。
踏みつけるように、踵を入れると、バキッ!と、良い音がした。
パタッと倒れるように上部がいとも簡単に崩れる。
「な、何をしておるバカめ!」
「あー壊しちゃった…」
「…残念そうにしてんじゃねえよ!だいたい何こんなもん作ってんだよおまえらぁっ!」
「おまえと嵐の愛の記録だ。残して何が悪い」
「子供の成長記録と同じ扱いしてんじゃねえよ!しかも、教室に持ってくんじゃねえ!」
「だったら何だ?あぁ?思い出は家に丁重にお持ちすべきだったか?コラァ!…まあいい。こういうことがあろうと思ってな…?」
狭山の手には、いつの間にか紙袋が。
中に手を入れている。
思い出は、丁重に。