王子様とブーランジェール
「へぇー。あのメガネちゃん、料理できんの」
蜂谷さんがおにぎりをまじまじと見ている。
まゆマネは隣でうんうんと頷いていた。
「すごいスピードでおにぎり握ってたよー。人が変わったみたいに。この肉味噌もさっきスーパーに買い出し一緒に行ったら『今日は豚挽肉とネギが安いので肉味噌にしましょう!さっきクルミも半額で売ってました!味噌はありますか?』って、家庭科室であっという間に作っちゃったのー!」
「へぇ…あのメガネが…」
「何も出来なさそうなのにな」
「メガネちゃん、パンも上手だけど、おにぎりも上手!」
桃李は、掃除や洗濯は出来ないが。
料理だけは得意。
おにぎりやパンだけじゃない。
学校休みの日は、店の従業員の賄いを作ってるだけあって、なかなかの腕前なのだ。
ブーランジェールスイッチ、パンだけじゃなくて、おにぎりにも入ったか。
先ほど真っ二つにしたおにぎりの半分を一口で食べる。
(う、うまい…)
肉味噌最高だわ。
クルミの食感もいい。
甘くて濃い目の味が、米に合うな…。
パンだけじゃなくて、おにぎりも美味いよ…。
桃李…。
なんだか、にやける。
食べ物美味いって幸せだわ。ホント。
「…まゆマネ、もうひとつください」
「ダメ。一人二個まで!…あっ!ちょっと!勝手に食べないでよ!ああぁぁっ!竜堂!」
「もうみんなに配り終わってるじゃないですか。余りを独り占めしようったって、そうはいきませんよ」
「もぉー!」
まゆマネとおにぎりの残りを取り合いしていると、糸田先生がズカズカと会議室に入ってきた。
ミーティングが始まる。
入ってくるなり、先生が話しを始めた。
「…えーと!先に予定言っとくからな?土曜日は、1、2年は第野高校グラウンドで紀葉高校との三つ巴で練習試合2試合、現地7時半集合現地解散。3年のみグラウンドで午前練習。マネージャーは学年帯同で。日曜日は調整日で、グラウンドで午前のみ練習」
へぇー。練習試合、1、2年だけ。
世代交代を感じるな。
それに、来週からリーグ始まるから、調整の週のようだ。
「…あと、坂下、林!」
「はい!」
「あのヘタレ女、午前中グラウンドに来させるから。頼んだ」
「はーい!メガネちゃんと一緒ですねー!了解!」
…な、何っ!
桃李、土日も来るのか?!
しかも、別行動だなんて…!
不安しかない…!