王子様とブーランジェール
突然の大声に、桃李は汚い悲鳴をあげたという。
そして、オーバーリアクションで、その場にすっ転んだ。
『あ、あ、あ、あわわわわ…な、な、な、ななな…』
『ウケる…完璧怯えてんじゃん…くくく…あははは』
うちのキャプテン、笑いまくり。
どうやらツボに入ったらしい。
人の怒られてる姿を楽しむ御方だから、桃李の怯える姿もきっとツボだったのだろう。
『あははは…あー。おかしい。ねえ、おにぎりうまかったって』
『は、は、は、はい…』
『また作ってよ。林、今日おにぎりないの?』
『今日は昼前に上がりなので、ありませーん!』
『えー。でも、俺、チャーハン食べたいわ。チャーハン作れるの?作ってよ。今すぐここで』
『え、え、え…』
てなわけで。
蜂谷キャプテンのワガママにより。
桃李は家庭科室でチャーハンを作ることに。
チャーハンを作ることになったと決まってからは、早かったらしい。
また、急に表情が変わった。
『…何チャーハンにしますか』
『…え?何って、チャーハン種類あんの?』
『じゃあ、あるもので作ります。林さん、賄い入ってきます!』
『ま、まかない?…』
そう言って、校内へ走る。
やたら、足が早かったらしい。
そして、しばらく経ってからまた戻ってきた。
『お昼に合わせて、また家庭科室行ってきます』
どうやら、お米をといで、炊飯器のスイッチを入れてきたらしい。
そうして、昼近くになると、また家庭科室に行き、練習終わる時間ピッタリにチャーハンが、マネ二人の分と合わせて17人分出てきたという…。
昨日の肉味噌の残りで作った、チャーハン…。
今度は、チャーハンでスイッチが入ったのか。
賄い作る感覚だったのか?
「ラーメン屋のチャーハンみたいだったわ。でも、マジで急にキビキビし出すからビックリしたわ、メガネ…」
そんなことがあったのか…。
桃李のチャーハンか。まだ食べたことない。
食べてみたいかも。
しかし…ちょっとイラッとしたのは、言うまでもない。
蜂谷さん…桃李に構うとは。
ただ、からかっただけだよな…?
ちょっとのことでも、神経質に気になったりする。
今の状況が状況だからなんだろうけど…あぁ、俺ってめんどくせー男だな。
先輩に嫉妬とか、終わってるわ…。