王子様とブーランジェール
それから、何時間が過ぎただろうか。
気温の上昇と共に、太陽がてっぺんに登り詰めた頃に。
本日の練習、終わった。
「…あっつい!」
「これ、帰りかき氷じゃね?」
「イオンにかき氷売ってんの?夏輝は何にする?」
「コーヒーフロートだな」
今日は朝から暑いと思っていたが、昼を迎えるともう灼熱地獄になっていた。
気温30度ぐらいあるんじゃないだろうか。
ずっとグラウンド上にいたから、なお暑い。
練習が終わるとすぐにもちろん着替えた。
いや、この気温じゃ着替えたって家に帰る頃にはどうせ汗だくだ。
そんなわけで、冷房がガンガンきいた、近くのスーパーのフードコードに寄ろうかという話が出た。
着替え終わった俺達一年生は、更衣室を出てだらだらと歩いている。
正面玄関口には、三年生がだらだらと座っていた。
「お疲れさまでーす」
「お疲れー。って、一年直帰?」
「いや、イオン行ってきまーす。先輩たちは?」
「イオン涼しそうでいいな?俺達も行くかなー」
「一緒は勘弁してください。大河原さん暑苦しいから」
「うわっ。竜堂ムカつく。爽やかそうにしてるからって調子に乗んなよ。イケメン死ね」
大河原さんにいつもの罵声を浴びせられていたが、その後ろでは、木元さんが座り込んでケータイをいじっている。
「木元さん、帰らないんですか」
話しかけたが、木元さんはケータイをいじり続けている。
「いやー…優里沙が帰ってこないんだよ。帰り一緒にラーメン食いに行く約束だったのに。連絡しても返信ないし」
優里マネ…そういや、桃李とおつかい頼まれて…って、桃李も帰ってきてないってことか?
「もうだいぶ時間経つじゃないですか。どこまで行ったんですか?」
「さぁ…あっ。きた」
木元さんのケータイにLINEの返信が入る。
しかし、その返信を見て眉間にシワを寄せた。
「…はぁ?『札駅にいる』?…何やってんだ?」
札駅?札幌駅?
「そんなとこで何してんすか。優里マネ」
「さぁ…」
札幌駅におつかいって…何の用事だよ。
何でもあるっちゃあるが。
すると、通知音が立て続けに鳴る。返信がきたようだ。
「えっ…ちょっと!『大変なことになったから来て!』って…何かあったのか?!」
え?大変なこと?!