王子様とブーランジェール
俺達の騒ぎで気付いたのか。
桃李と仲良しの黒沢さんや菊地さん、尾ノ上さんがこっちにやってくる。
足取りは、恐る恐るとしていた。
「…あ、りみちゃん、おはよ。真奈ちゃん美咲ちゃんもおはよ」
「…桃李?…なの?」
桃李は至っていつもと変わらない態度でいるが…黒沢さんは、表情が疑惑そのものとなっており、その変わり果てた桃李の顔を覗き込んでいる。
「りみちゃん、どしたの?」
「桃李、あんた…」
「え?」
「可愛い…」
すると、黒沢さんの後ろに待機するように並んでいた二人が急に『可愛すぎるーっ!』と、叫びだした。
なっ…!
その大声に反応したのか。
クラス中の女子が一斉に立ち上がり、一斉に桃李の方へとやってくる!
そして、桃李を囲んで、一斉に騒ぎだした。
「ちょっと桃李!やっぱり可愛いじゃん!髪!ストレート似合う!」
「ホントにホントに!やっぱりコンタクトで正解でしょ!」
「眉毛整えてメイクもしちゃってー!桃李はやっぱり目が大きいよー!」
「ホントに超美少女になっちゃったー!」
桃李を囲んでいる女子たちは、あれよこれよとみんな桃李の頭を撫でたり触ったり、手を引っ張ったり触ったり…。
女子みんなして、桃李、桃李って…。
「あ、あ、あ、あの…わ、わわわわ…」
桃李自身は、みんなに急に囲まれて、何が起こってるかわからず、挙動不審だ。
美少女の挙動不審…。
な、何だ…?
桃李がクラスの女子に囲まれて、それはまるで人気者のような。
こんな光景、今までに見たことないぞ?
桃李は、今までずっと、教室の隅でひっそりとしているような存在だったはずなのに!
「おっはよー!…おぉぉっ!桃李ぃっ!」
柳川も登校してきた。後ろに松嶋もいる。
教室に入るなり、桃李を見つけては群衆を掻き分け、輪の中心に入っていった。
ものすごい勢いだ。
「ゆ、ゆうみちゃん、おはよ」
「か、可愛い可愛い可愛い可愛いよぉーっ!桃李ぃっ!やっぱり絶対眼鏡よりコンタクトの方が良いってぇぇっ!髪もサラッサラだよー!サラッサラ!」
また、桃李の髪をぐしゃぐしゃとしながら頭を撫でている。
「ゆうみちゃん、痛い…」
「ホント、チワワみたいになっちゃったー!チワワ!」
何かがおかしい…!
めちゃくちゃ違和感だ!