王子様とブーランジェール
すると、部屋のドアがカチャリと開く。
そこからは、優里マネが姿を現した。
よろよろとよろめきながら。
『…あぁーっ…信じられない…』
一人で首を横に振っている。
『優里沙、どしたの…』
『坂下、ママラーメンうまいわー』
めったに聞かない彼女の悲鳴に、少し心配になり、声をかける。
しかし、優里マネの目は殺気立っており、声をかけたことを一瞬後悔したという。
『信じられない…世の中にあんなJKいるなんて…』
『メガネか?どうした?』
『あの子、ブラジャーしてない…』
『ブラジャー…』
それは…。
これ以上のコメントは、禁断の領域に足を踏み入れてしまうことのような気がして。
何もコメントできない…。
何てことを振ってくるんだ…!
『えー?でも、Tシャツ透けてなかったよ。乳首』
蜂谷キャプテン!
そんなこと、恥じらいもなく言うんじゃない!
禁断の領域にずかずかと足を踏み入れまくった!
なぜ、そんな平然としてられる?!
『あの小学生がつけるような…スポーツブラとかいうものを着けてるのよ…信じられない…私でも着けたことない…』
そんな下着の話とか…男子の前で言わないでくれ…。
聞いた俺もバカだったよ…。
思わずフリーズしていると、優里マネ母が『えぇーっ?ノーブラで学校行ってたってかい!』と、奥から叫んでいた。
『今週ずっと見てたけど、まさかとは思ったのよ…そしたら…あぁ、ケータイ、ケータイ…』
うわ言のように呟いて、ケータイを探している。
…確認したかったことって、それだったのか。
ノーブラ…いや、スポーツブラ?何それ?
リビングテーブルの上に置いてあったケータイを見つけると、すぐに手に取り、電話をし出す。
なぜ電話?
しかし、その電話をかけた相手とは。
意外な人物…!
『……あ、もしもし、エリ?…うん、優里沙…』
エリ…狭山ぁっ?!
なぜ、そこで狭山に電話する!
『そう…そうそう、さっきLINEしたあの続き…で!エリのあの…お店にいた伊織ちゃん!…そう、ランジェリーフィッターになった伊織ちゃん!ちょっと呼んでくれない?…だって!事件よこれっ…!』
優里マネ的には、ノーブラで学校に行ったことは、よほどの事件らしい…。
誰かを呼んでしまうぐらいだし…。