王子様とブーランジェール




「夏輝、まずは、咲哉に謝ってよ。ひどいことしてごめんなさいって」



まずは、そう来たか…。

め、めんどくさ。



「………」



だが。

ど、どうしよう…。

謝るってか。

咲哉を横目で見る。

うっ…顔を合わせづらい。

怒りに任せて、痴漢野郎だとか、暴言を吐いてしまったのだ。

恥ずかしい…!




モジモジと沈黙していると、理人がイラッときたらしい。



「夏輝、悪いことしたらごめんなさいを言いなさいって、たけのこ保育園でも、星の子幼稚園でも教わったはずだよねー?」

「………」

「さくら組では教わらなかった?すみれ組では教わったけど?」

んのやろ…。

そんなとこまで遡るかってんだ。

覚えていられるかよ…どうだったかな。

「リッフィーとダンナって、保育園も幼稚園も一緒なの?」

「うん。3歳ぐらいからずっと一緒。小学校も中学校も」

「すげー。兄弟みたいだにゃ」



そう。兄弟のように、ずっと同じ時間を過ごしているから。

理人には、俺の考えていることが手に取るようにわかるらしい。

俺は、あんまりよくわからないのに。

いや、理人自体が何を考えてるかわかりづらい性格というのもあるんだけど。



でも、今の状況は、わかる。

言うことを聞いておかねば…後がめんどくさい!




「さ、咲哉…」



床に正座したまま、咲哉をチラッと見る。

咲哉は頷いていた。




「ご、ごめん…なさい…」



語尾が消えそうになってしまった。

あまりにも恥ずかしくて。



「………」



俺の謝罪の言葉を最後に。

なぜか、みんな沈黙してしまった。

みんなして俺を見つめている…。

なぜ…。

この沈黙、キツイんですけど…。

視聴率100%の沈黙…。

あぁ…。



その沈黙を破る、最初の言葉を発したのは、なぜか陣太だった。



「しょんぼりして謝る夏輝、何か可愛いな…」



…あぁっ?!



「女子の胸キュンポイントがわかったような気がする…」

「陣太、夏輝を甘やかさなくていいから。調子に乗らせないで」



そんなことでは、調子に乗らないわ…。



「な、夏輝っ!」



咲哉がササッと傍に寄ってくる。



「夏輝、俺もごめん。ごめんよ!夏輝の好きな女子の手を握ったり、唇とか顔とかおっぱい見ていやらしいこと考えたり、下心丸出しでごめん!もうしないからな?な?」



これ、何の会ですか…。



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