王子様とブーランジェール
「とりあえず夏輝、俺達はこれからもずっと友達だからな?これからも仲良くしよう?な?な?」
そう言って、咲哉は俺の肩に手を添えてウンウンと頷いている。
あれだけのことをしたのに、怒ってないんだろうか。
こいつ、優しいな…。
しかし、直接この件には関係のない幼なじみがご立腹のようだった。
「咲哉、優しすぎる。そんな中途半端な謝り方で許すなんて、優しすぎる極まりない。俺だったら謝罪会見開かせるけどな」
理人…まだ、納得いってないようだ。
シラッとしらけた視線が痛い。
「大体さ?夏輝のこじれた恋愛事情に『わかってんのか?』なんて連発されたって、わかるわけがないだろ。誰にも言ってないんだし。非常に迷惑すぎる絡み方だ」
「はぁ…」
「それに『桃李に構うな』なんて、よくそんな人権侵害すれすれの発言できるよな?桃李の人権と自由を奪ってんの、夏輝だろ?みんな構わないでいたら、桃李がひとりぼっちで可哀想だ!」
「はぁ…」
そんなつもりで言ったんじゃないんだけどな…。
「それに『桃李に構うな』なんて無理な話だよ。だって桃李は可愛いから、みんな構いたくなるに決まってんだろ。何?この独占欲の最骨頂。ストーカーと紙一重だろ!」
「はぁ…」
また、ストーカー言われた…。
すると、周りの三人は、ブッと吹き出していた。
な、何だよおまえらまで!
だが、反論する気力無し…。
はぁ…。
「リッフィー、中学ん時はどうだったのさ。まさか、今回みたいにキレて暴れたりとか…?」
松嶋が、興味津々で質問する。
俺の過去に触れるな…。
「中学の時はない。まあ、最も、だいたいの男子らは夏輝が桃李を好きだって知ってたし。ヘタに桃李に手を出したら夏輝に殺されることもわかっているから、あえて桃李には必要以上に近付かない、みたいな」
「…え?そうなの?」
まさかの新事実に、俺が質問してしまった。
「そうだよ。知らなかったの?」
な、なんという…!
他の三人も仰天の表情だ。
「神田、何か可哀想だな…」
「っていうか、夏輝は昔からそんなに恐れられてたワケ?強かったワケ?」
「キックボクシングのおかげか、力も圧倒的に強いし、ケンカは負け無し。それに、小学5年の時にセクハラ暴力教師に楯突いて、騒いで辞めさせた男を恐れないはずがない」
「はぁ…ダンナ、結構武勇伝あるんだな…」
「………」
目の前にある理人の足を、ペチッと叩く。
理人、それは…言うな。