王子様とブーランジェール
「…しかし、5年も片想いって、すごくね?」
理人がベラベラと喋るおかげで、こんなことまで知られてしまった。
別にいいんだけど…深い話は説明するのがめんどくさい。
「…何で5年も引っ張ってんの?夏輝だから、告ってしまえばだいたいの女子はOKじゃないの?な?」
咲哉…な?って言われても。
どうコメントしたらいいのかわからず、黙っていると、またしてもこの男が代弁してしまう。
「夏輝はチキンなんだ。照れ隠しがエスカレートして今に至るから、こじらせ過ぎたんだよ。要はチキンなだけ。意気地無し」
理人くん、ひどくありませんか…。
「もう、告っちゃえば?」
反射的に体がビクッと震える。
何でそう、核心を突いてくるのだ…!
「だってよー?神田に近付いてくるヤツが嫌なんなら、いっそのこと『桃李は俺のモノだぁーっ!』って、叫んだ方が良くね?付き合っちゃえば敵前逃亡するヤツ増えて迂闊に近付いてこないっしょ」
咲哉、なぜそんな簡単に…!
告白する→付き合うを考えただけで、大分恥ずかしくなってしまい、両方の手の平で顔を隠してうつむく。
顔が熱い。今現在、だいぶ赤面しているに違いない。
「…あれ。あれあれ。どうしたのこのリアクション。夏輝が照れてんの?嘘。嘘でしょ?」
咲哉は俺に顔を近付けて覗き込んでいる。
やめて…見ないで…。
「あんなに女子に囲まれても全然普通にしてる夏輝が?3年にチューされても照れないで怒りを露にしていた夏輝が?ど、どうして?」
「咲哉、ごめん。夏輝は桃李のことになると全然ダメでイタイんだ。本当にイタイイタイ」
「リアクション可愛いけどにゃ」
「純情ってやつ?もう余計に告ってしまえば?」
「いやいや!待てよ咲哉!もしフラれたら、夏輝は恐らく本気のストーカーと化すぞ!」
「でも、勇気がないだけで、それで5年って、ある意味強者でしょ」
「その間、違う女子と取っ替え引っ替え付き合えて、抱けるのも、俺はすごいと思うけどなー」
陣太、それはグサッときた。
取っ替え引っ替え…言い方悪いですよ。
今考えたら、御乱心してるとしか思えない。
ホント、御乱心…。
「それって殿様みたいな感覚?正室と側室みたいな」
咲哉も、ホントさっきからみんなグサグサと…。
日本国、一夫多妻禁止だから。
殿様、久々に聞いたぞ。
俺、やっぱり殿様なのかな…。
フラれたらストーカーと化すぞ!が、一番グッサリきたわ…。
みんな、好き放題言いやがって…。