王子様とブーランジェール
「まあまあみんな。ここはひとつ、見守ってやろうじゃないの!」
松嶋がパンと手を叩く。
何を仕切ってるんだおまえは。
さっきから、楽しそうに話を聞いてやがってぇ…。
「そういや、慎吾って神田と仲良くない?」
「そうだ。むしろ、神田と慎吾が怪しいと思ってたんだけど俺」
松嶋の話はさておき、陣太と咲哉はそっちの話の方が気になるようだ。
すると、松嶋はぷぷっと笑っている。
「いやいや。桃李は大切なお友達ですよーん?可愛くて可愛くていじりたくなっちゃうんだけどねー?」
「友達ってかー」
「いじりたくなる…わからないワケでもないかな」
「そうそう。俺は桃李の味方。桃李を応援してんのっ。応援副団長さ」
「何だそれ」
「団長が別にいるのかよ」
「これはホント!…ね?ダンナ?」
松嶋は俺を見てニッと笑っている。
俺に『ね?』とか振るな。
まったくよくわからない。
『俺はダンナの敵じゃない』
敵じゃないアピールか…?
まったくよくわからない…。
「…ダンナの『幼なじみはいろいろと難しい』は、俺も共感できるかな」
「…は?」
何の話かと思いきや…あぁ、宿泊研修でのあの話か。
いろいろ思い出していると、松嶋はへへっと笑ってくる。
「でもさぁー?俺達は人間だから。絶えず成長という名の変化をしているワケよ」
成長…?
「桃李の変身もそう。ホントは今週末に、俺が眼科に連れてってコンタクト作ってやろうと思ってた」
「は…?」
それは、冗談じゃなく、本当だったのか?
顔を上げると、松嶋は頷いている。
「桃李は、まるで呪いのような理由でかなり渋っていたんだけど、でも結局作るって決心してた。だから遅かれ早かれ眼鏡は外すことにはしていたんだ」
桃李が…決心を?
眼鏡を外すって…?
「桃李だって成長してる。今、いろいろと頑張ってるんだよアイツ」
桃李が…頑張ってる?
何を?
何で?
心当たりを探っていると、また、松嶋はこっちを見続けて頷いている。
「…だからさ?好きなんなら、桃李の頑張り含めたその変化、受け入れてやってよ。ね?」
松嶋…おまえに言われると、何だか腹立つが。
最もなこと、言ってるよな…。
「あぁ…」
「ダンナだって成長するんだぜい?いつまでも小学生みたいな照れ隠しはやめた方がいいにゃ」
「…うるっせえな!」