王子様とブーランジェール
頑張るおまえに送るエール
「…か、か、神田さん…ど、どうされたのですか…?」
「え?え?…あ、あぁっ…眼鏡やめました」
翌日の昼休み。
早速、高瀬が教室にやってきた。
桃李に会いに…。
…ちっ。うぜえな。
果たして、桃李はボスゴリラを撃破することが出来るのだろうか。
その様子を、理人と弁当を食べながら、遠くで見守る。
しかし。
桃李の変身した姿を、初めて見た高瀬。
冒頭の一言を発した。
今、顔が驚きで面白いことになっている。
ゴリラの驚愕の表情が、こんなに面白いとは思わなかった。
また、吹き出しそうになる…。
「め、眼鏡やめたのですか!ま、まさかこんな顔をしていたなんて…!いや、可愛らしいお方だとは思っていましたが…!」
「あ、天パもやめました…」
「ど、どうりで髪がサラサラで頭が小さくなって…スカートも短くなって…足…」
まさかこんな顔…失礼じゃねえのかこのゴリラ。
桃李は天パ眼鏡でも、十分可愛いじゃねえか。
だからてめえは最低ゴリラなんだよ。死ね。
ついでに足なんか見てんじゃねえや。このスケベゴリラ。
…制服、あのブラウスこそは着てこなかったが、スカートは短いままだった。
細い足、丸出しだ。コノヤロー。
高瀬に更なる敵意を持ちながら、引き続き遠くから二人の様子を見守る。
「…あ、高瀬センパイ…あ、あの」
「神田さんっ!」
「え?え?え…ひいぃっ!」
桃李が挙動不審になり始めた。
それもそのはず。
高瀬、桃李の両手を取り、握っている…!
こ、こいつ!桃李に触りやがって!
このクソゴリラ…!
「神田さん!もう、俺とデートしてくださいっ!公園に行きましょう!」
「え?え?えっ?!…あ、あの!あのその、高瀬センパイっ!わ、私、私、今忙しいし、サッカー部とか、学校祭の準備とか!」
「それは終わってからでも構いません!あ、夏休みにしますか?!」
「あ、あ、いえ、その…ご、ごめんなさいっ!わ、私、センパイと二人で出かけるとか、何をしたらいいかわからないし、こ、恐いし…!」
「不安にならなくても大丈夫です!恐いことなんて何もありませんよ!俺がついてますから!」
「え、え?…ええっ?!」
桃李…この男を撃破するには、おまえにはまだレベルが足りなかったようだ。
俺も、このゴリラを見くびってたよ…。
こいつ、思った以上の強敵だ。
『ごめんなさいっ!』や、『恐いし』って、はっきり言われてるのに、断られていることをわかってない。
おめでたいヤローだ。
っていうか、高瀬…。
桃李に触るな…!
その手を…離せえぇぇーっ!!