王子様とブーランジェール
先ほど食べ終わった弁当の箱を急いで片付ける。
理人は、弁当を食べながらそんな俺の様子を見ていた。
「何。出陣すんの?」
「桃李には手に負えない強敵だ。ボスゴリラは」
「夏輝は面白いね。飽きない」
ちっ…面白がってんじゃねえよ!
こっちはだいぶ必死なんだぞ!
「と、とりあえず!今後の予定をゆっくりお話しませんか?屋上にでも…」
「せ、せ、センパイ!ち、ちょっと…!」
「やっだぁー!センパイゆっくりお話ししましょー!…夏輝、動物園行きたいなー?ゴリラがたくさんいる動物園!」
二人の間に、割って入ってやる。
突然、ふざけた口調で会話にまで割って入ってきた俺に、二人は絶句していた。
「な、夏輝…」
「竜堂!またおまえか!」
またおまえか!言われても!
何回も出現してやるってーの!
叩き潰してやるこのゴリラ!
「センパーイ?…私とゆっくりお話しましょうね?…人のいないところで?…」
ひきつらせながらも、偽りのスマイルを作って浮かべる。
桃李の手を握っている、高瀬のその手を力ずくで引き剥がそうとした。
「なっ!…おまえ、邪魔するな!」
「…センパイは…私とお話するんですって…!」
高瀬の右手の親指を掴んで捻る。
「痛っ!」という悲鳴と同時に、一気に手を引き剥がし、胸ぐらを掴んで一気に教室の外まで引っ張り出した。
「何だおまえは!」
「…るっせえな!こっちに来い!」
廊下に出て、勢いそのまま力ずくで、高瀬を引っ張って連れ出す。
桃李から見えなくなるぐらい、少しでも遠く…!
「行っちゃった…」
「うん…」
廊下も突き当たりまで来てしまったところで、高瀬から乱暴に手を離す。
壁に叩きつけてやった。
「竜堂…このっ!」
高瀬が立ち上がり、俺を睨み付けたところで。
直接対決、開始となる。
「…竜堂貴様あぁぁっ!何でいつも邪魔ばかりするんだおまえはあぁぁっ!!」
「…るっせえな!このゴリラぁっ!何でいつも教室にしつこく来てんだてめえはあぁぁっ!」
お互いに顔を付き合わせて、にらみ合いながら、怒鳴り合う。
まるで、ヤンキーのメンチ合戦のようだ。
「俺が神田さんに好意を持ってるのがわからないというのかおまえはあぁぁっ!」
「わからないワケないだろうがよ、このクソゴリラがあぁぁっ!」