王子様とブーランジェール
「酒の話はもういい!それによくここまでゴリラ引っ張ってこれるな?!」
「ゴリラ相手にしてんだから、ゴリラの話しかないじゃねえの!だから!ゴリラが酒飲んでラブホテルだろが!」
「ラブホテルじゃねえ!竜堂、おまえのチャラ男ぶりだっつーの!嵐と階段でキスなんて、白昼堂々よくもやらかしてくれるな?!」
げっ…その話まで知ってるのか?
俺、案外隙だらけだな。
「…それもおまえが代わりにキスすればよかったのによ!こっちはしたくもないのにキスされてんだ!神様ゴリラ様、代わってくださいってえの!」
「おまえ、だいぶ開き直ってんな?」
「るっせえな!ゴリラのくせに冷静になってんじゃねえよ!」
「とりあえずな?おまえみたいな女に囲まれてチャラチャラしてるようなヤローには言われたくない!」
「…あぁ?」
あれだけヒートアップしていた口論も、ようやく冷めてきた。
…と、思ったが。
女に囲まれて?
チャラチャラしてるようなヤロー?
「…だぁーれが!女に囲まれてチャラチャラしてるようなヤローなんだ?!あぁ?!おまえもメスゴリラに囲まれてチャラチャラしてんだろうがよ!だから動物園行っとけやコラァ!」
「ゴリラのネタ尽きねえなぁ?おまえだよ竜堂!女に囲まれてチャラチャラしてるようなヤローは!おまえだよ!女子にちやほやされて、言い寄られまくって!」
「あぁ?僻みかコラァ!だったら、言い寄ってくる女、ぜぇーんぶ、一人残らずおまえにやるよ!せいぜい人間になるための嫁を探してみろや!」
「…そんなチャラチャラした男とピュアで可愛らしい神田さんは釣り合わん!俺は認めんぞ!」
「だぁーれが!おまえに認めてもらいたいと思ってんだボケがコラァ!ゴリラの公認なんかいらねえぞって!」
「神田さんは俺が幸せにする!おまえは女に囲まれてチャラチャラしてろ!」
「はぁ?…はぁ?!桃李にはゴリラの幸せなんていりませぇーん!…桃李をメスゴリラに仕立て上げる気かコラァ!許されないわ!」
「ふざけんなよ竜堂おまえぇぇっ!」
「るっせえんだよこのクソゴリラあぁぁっ!!」
またしても、ヒートアップした。
同時にワイシャツの襟を掴み合う事態。
こいつ…殺す!
絶っ対!殺してやる!
桃李は俺が幸せにする、だぁ?
愛…だぁ?
そんな重要事項、簡単に口にしてんじゃねえぞ!
許されないわあぁぁっ!