王子様とブーランジェール




「…愛だの幸せだの簡単に口にしてんじゃねえぞコラァ!この無責任ゴリラがあぁぁっ!」

「愛する人を幸せにしたいと言って何が悪いんだあぁぁっ!」

「どこのゴリラの骨かわからないヤツが、愛を語ってんじゃねえぞ?!俺達には歴史があるんだよ歴史が!差し入れが美味くてコロッとイッちゃった、ただそれだけのヤツに何がわかるってんだボケえぇぇーっ!!」

「一緒にいた時間の長さなんて関係ないだろうがあぁぁっ!」



お互いの襟を掴み合い。

強く掴み過ぎて、お互い手がプルプルいってる。

だが、そんなの構わず、またもやメンチ合戦を繰り広げる。



負けねえ…絶対負けねえ!

おまえに俺達の、俺と桃李の何がわかるってんだ!




「…殺すぞゴリラあぁぁっ!」

「上等だあぁぁっ!」



しかし、そこへ。

俺達の勢いを殺してしまう輩が現れる。



「…何してんだ、おまえら」

「ケンカ?ケンカ?」



直接対決の最中、そんな俺達をジーッとしばらく見守っていたのか。

シラッとした顔で、間に入られるように声をかけてくる。



「…さ、狭山さん!奈緒美さん!」



とたんに高瀬は俺から手を離す。

二人の登場に気をとられていると、「…どけっ!」と、高瀬に手を振り払われた。



ちっ…またしてもこの二人の登場か。

狭山と奈緒美…。



「またモメてんのかおまえら。相性悪いな?」

「無駄なケンカはやめとけ!このバカめ!」



無駄なケンカ…?

しかし、言ってることは最もなので、反論できず。

黙っているしかなかった。



「…で?どうした?」

奈緒美は俺達二人を見ている。

俺は目を逸らして黙っていたが、高瀬が慌ててその場しのぎの言い訳を始めた。

「な、奈緒美さん、これには深いワケがありまして…」

深いワケ?んなもんねえだろ。

何取り繕ってんだこのゴリラは。

めんどくせー。

何に対してかはわからないが、イライラが止まらない俺は、ヤツらに背を向けて、その場をさっさと立ち去る。

「…竜堂!待て!」

「…るっせえな!もう教室来んじゃねえぞ!」

一言捨て台詞を吐いて、さっさとずらかった。



くっそ…高瀬のヤツ。

俺の殺す人間リストのナンバーワンにしてやる。

愛だの幸せだの簡単に抜かしやがって…。

そんなもの、軽々と口にすべきものではない。



今回は邪魔が入ったが。

そのうち…絶っ対、殺す!


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