王子様とブーランジェール
高瀬に対するイライラ気分を抱えながら、教室に戻る。
しかし、そこでまた桃李に来客がいたのだった。
廊下に、いる。
ドアのところで、教室の中を覗いていた。
美少女のせいか、目立つ。オーラがある。
「桃李!また迎えに来たよー!行こう!」
出たぞ、この女…!
藤ノ宮律子…!
桃李が教室から出てきた。
「あ、律子さんすみません…松嶋、今、糸田先生のとこに…」
「知ってるよ?昔のチアリーダーの衣装が見つかったんでしょ?LINEで聞いてる。だから迎えに来たんだよ?」
藤ノ宮律子…何でだか、ニコニコじゃねえか。
「じゃあ、行こう?」
そう言って、藤ノ宮律子は。
桃李の手を取る。
手を繋ぐ…と、いうか。
指を絡めて…!
恋人繋ぎか?!
な、何だと!
女子同士の…恋人繋ぎ!
唖然…!
そして、俺の前を平然と通り過ぎる。
だが、桃李は俺の存在に気付いた。
すれ違いざま、振り返る。
藤ノ宮律子との手は繋いだままだ。
「…あっ、な、夏輝!…た、高瀬センパイは?」
忘れていなかったか…。
桃李ならもう忘れてると思ってたけどな。
「…殺し損なった。あ、今そっち行ったら鉢合わせるかもしんねえから気をつけろ」
「あ…うん」
藤ノ宮律子に「行こ?」と、手を引かれ、桃李は連れていかれた。
藤ノ宮律子…また、桃李を連れて行きやがった。
何であんなに仲良しなんだ?
手も恋人繋ぎしやがって…。
…ま、まさか!
俺はここで、あるひとつの仮説を立ててしまった。
まさか、藤ノ宮律子は…!
同性愛者…いわゆる、ズーレーってヤツなのでは…!
(狭山のように、業界用語風に表現してしまった…)
まさか、桃李を、禁断の世界に連れ込もうとしているとか…!
『桃李…可愛いわね?食べちゃいたい…』
『あっ…律子さん、やめて…そこは…』
…だなんてことを、繰り広げてるんじゃねえだろなぁ?!あぁ?!
ふ、ふざけんなよ?
もし、そんなことになってるんだったら。
俺は、高瀬のように女に手を挙げる気は、さらさらないが。
藤ノ宮律子を、殺す人間リストのナンバー2にするぞ…!
桃李を、禁断の世界に連れて行かれてたまるか!
またしても、憶測はとんでもない方向へと行ってしまった。
よく考えたら、んなワケあるかよ…。