王子様とブーランジェール
「…麻倉先生もその時代、星天にいたの?」
「うん。今年10年ぶりにこの高校に再赴任したんだ」
何でもあり…本当のデスマッチか。
死ぬまで戦え、みたいな?
「超盛り上がったぞー?特に男子は。なーんで、男子って格闘技の試合見ると盛り上がるんだろなー」
「先生、四天王ってどんな人たち?」
咲哉が目をキラキラさせて聞いている。
かなりハマったようだ。
「うーんと…ヤンキー野球部員・朝戸、ゴリゴリの柔道部・昼川、チャラ男なサッカー部・夕波、帰宅部ギャル・夜薙…」
「…ギャル?…今、ギャルって言った?先生!」
「じ、女子?…四天王に、女子?」
「あ、うん。女子」
「ええっ!」
俺達一同、驚愕の声を上げてしまった。
女子が、焼き肉チケットバトル?驚いた…!
「女子とは言っても、なぜかこいつは強かった…今でいう、狭山みたいな」
狭山!…過去に似たような人物がいたとは!
相当めんどくさいヤツにちがいない。
「…あ、ちなみにこの夜薙ってのが、俺の親友の彼女ね」
度々出てくる先生の親友の彼女…狭山みたいなヤツだったのね。
「で、一年時、二年時の学校祭で焼き肉チケットを景品に、デスマッチが開催され、一年の時の優勝はギャル・夜薙、二年の時はサッカー部・夕波。夜薙と夕波は特に仲が悪くってなー」
「三年の時は?」
「それな?実はサッカー部・夕波は退学してしまったのよ。校内で事件起こして、それを夜薙に大っぴらにされて。だから、三年の時は中止。男子生徒はがっかり」
なんと…退学者も出てるとは。
だいぶハードな時代だったんだな、先生…。
すると、一緒に話を聞いていた松嶋が、急に『はい!先生!』と、手を上げていた。
「何だ、松嶋?」
「仙道先生!ちょいと噂で聞いたのでやんすが…」
「ん?」
「その四天王デスマッチ、今年、リバイバルすると言うのは本当かにゃ?」
「…ええっ!!」
松嶋、それは何情報だ?
まさか、んなわけあるか!
第一、四天王もいないのに!
そんな、公認ケンカのような催し、この御時世、無理だっつーの。
すると、先生の顔色が変わった。
「まさか松嶋!んなワケないでしょ!…てなわけで、おまえら、準備しっかりなー?」
そう言って、仙道先生は苦笑いしながら後退りして、俺達からゆっくり離れ、すたこら逃げていった。
「あ!先生、逃げた!」
「怪しい逃げ方だな…」