王子様とブーランジェール



桃李に壁ドン…どんなシチュエーション?

壁ドンって、どういう時に使う?

相手を逃がさないように…相手を逃がさず、こっちを注目してほしい時か?

頭で考えると余計わからないものだな。



(………)



先ほど同様、音をたてて、両手を壁につく。



『…俺だけを見ろ。逃がさねえ…』



『………』



本当の威嚇行為になってしまった。



『…それが夏輝の願望?…あはははは!』

『う、うるっせぇな!…余計なこと吹き込みやがって!』

『暴君殿様だろそれ!』

かなり恥ずかしくなってしまい、理人に絡む。

どつき合いとなり、終いには掴み合いとなった。



『うぉっ!夏輝、かっけぇ…』

『俺様的な?マジ顔、半端ねえな?』

『そっち路線好きな女子にはたまらないんじゃね?』

その横で、陣太と咲哉は俺の動画を再生して見ていた。

『俺にも見せろ!俺の勝ちだ!』

『何言ってんの?この暴君は。どう考えても俺の勝ち』

『…ふざけんな!もう一回、もう一回勝負だ!』


完っ全に、戦闘モードに入ってしまった。

すると、陣太がスマホ片手に提案してくる。


『じゃあ、今度はシチュエーション変えようぜ?』


それから、俺達の悪ノリはエスカレート。

陣太監督のもと、咲哉カメラマンが撮影し。

わざわざシナリオ設定して。

教室を飛び出してしまった。



玄関にて、手、繋ぐ?と、手を差し出す場面がある、一緒に下校するシチュエーション。

誰もいない教室で、見つめ合ったのちに甘い言葉を吐くシチュエーションや、廊下ですれ違いざまに声をかけるシチュエーションとか。

至近距離で、相手の顔に触れたり、頭をポンポンしたり。

終いには、抱き寄せて『好きだよ…』と、言ってしまった。

相手、咲哉だけど。



もう、笑う笑う。

動画を撮っては、再生をして、みんなで笑い転げる。

『何このキザっちいスマイル!偽りじゃねえか!もろに!ぶはははは!』

『夏輝はマジ顔よりスマイルの方が女殺すわきっと!』

『顔ひきつってるだろ!…これ、やり直ししろって!』

『ダメダメダメ!もう笑えて笑えて出来ねえ!ぶはははは!』

悪ノリしすぎて、二人合わせて20本ぐらい撮ってしまった。



だいぶ遊びに行ってしまい、教室から姿を消していたため。

『あんた達、何遊んでんの!手伝いしてよね!』

と、黒沢委員長に怒られた。



昨日は、それで終わり。



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