王子様とブーランジェール




シナリオ打ち合わせは、なし。

理人完全オリジナルらしい。



『…チョコ、食べる?』



そう言って、カメラにゆっくりと顔を寄せている。


突然、左手でカメラを覆った。

まるで、目隠ししているかのように。



しばらくしてから、手を離す。

理人もカメラから少し離れた。



『…美味しかった?』



そして、悪そうな微笑を…。



え…どういうこと?

チョコ、食わせてないじゃん。



「り、理人…おまえ、まさか…」

陣太、顔が赤くなってるぞ?

「早く動画再生してみて?」

理人はなぜかドヤ顔だ。



再生した動画を四人で見る。




『…チョコ、食べる?』



そして、理人の顔が近付いてくる。

…あっ。目隠しされた。

目隠しは、しばらく解かれず。

3秒ほど、暗闇のまま。

そして、目隠しは解かれ、ちょっと悪そうに微笑む理人の顔が現れる。



『…美味しかった?』



「…うぉっ!これ、チョコ食わすと見せかけて?」

「目隠ししてキス?!」

…何っ!



「さぁー?」



理人は笑いを堪えていた。



野郎…これ、実体験だな?

どこの誰に使ったんだ!



「すげっ…理人、かっけぇ」

笑いはどこへやら。

咲哉はマジでその動画に見いっている。

「色気あんな」

負けた…。

どうでもいいけど…。

理人は、ちょくちょく彼女がいる。

恋してる素振りは見せないのに、いつの間にか彼女がいる、みたいな?

だから、こんな実体験多いのか?

「この、百戦錬磨」

「夏輝だって何人も彼女いただろ。本気じゃないヤリたいだけの彼女だけど?」

「…んだとコラァ!何てことを!」

「え?今もいる?うわっ。桃李に言っとくわ」

「んなもんいねえし!黙っとけやその口!」

またしても、どつき合い、掴み合いが始まった。

「こいつら、いつもモメるよな。もうオチ並」

「ケンカするほど仲が良いってか?」



理人とキャットファイトを繰り広げていると、「竜堂くーん!」と、黒沢さんがやってきた。



「竜堂くん、ちょっと正面玄関口行ってくれない?暇してるし、何もしてないでしょ?」

「え?何か仕事?」

「下に荷物来てるから桃李に頼んだんだけど、箱でまとめて来ちゃったみたいで、運べなくて困ってるみたい。ちょっと手伝ってあげて」

「あ、はいはい」



< 255 / 948 >

この作品をシェア

pagetop