王子様とブーランジェール



理人から逃れて、早速赴く。

だが、他三人は、そんな俺をニタニタと見つめていた。



「神田が困ってるんだとよ…王子様、助けに行くとさ?」

「カッコいいとこ見せたいからって張り切っちゃって」

「下心丸出しだ?ウォウウォウォウウォ」



何だか、めんどくさっ…。



結局、陣太と咲哉にも桃李への片想いが知られてしまったのは、いいんだが。

冷やかしてくるの、めんどくさっ。



逃げるように教室を出る。

桃李が待ってると思ったら、ちょっと早足になった。



歩きながら、考え事をする。



『相手がそこにいると見立ててやるんだよ。例えば、夏輝なら桃李とのラブラブライフを妄想して…』



ラブラブライフ…。

考えただけでも、失神しそうになるわ。



ラブラブライフか…。

まず毎日、手を繋いで、登下校?



宿泊研修の時の、あの手の感触を思い出した。



(………)




恥ずかしくなってしまい、そこらへんの壁にもたれこむ。

一人壁ドン状態。



ダメだ…ダメだダメだ!

照れる…。



気を取り直すため、頭をブンブンと横に振った。

深いため息が出る。

何やってんだ俺は。

手を繋いで登下校を想像しただけでダメだとか、どうなってるんだ。

終わってんな。



再びため息をつきながら、歩き出す。

正面玄関口はもうすぐだ。



だが。



「…夏輝いぃぃっ!」



正面玄関口の方から…叫びながら、こっちに向かって走ってくる?!

あ、あれは…!



「夏輝いぃぃっ!…助けてえぇぇっ!」



と、桃李ぃっ?!

こっちに向かって、猛突進してくる?!



「…は?!はぁっ?!」



何が何だかわからず、思わず立ち止まってしまった。

ど、どうした!

なぜ、そんな恐怖に満ち溢れた表情で、こっちに走ってくる?!

まるで、化け物に追いかけられているような、物凄い形相だ!



すると、桃李の後を追い、悪そうな表情で、大爆走してくる輩がいた。



「…待てえぇぇっ!メガネえぇぇっ!」



あれは!…蜂谷さん?!



な、なぜ!



「夏輝いぃぃっ!」



物凄い恐怖の形相をした桃李は、目の前に現れるなり、俺の後ろにバッと隠れる。

両サイドの腰をグッと掴まれた。

(…いぃっ!)

体がビクッとしてしまった。


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