王子様とブーランジェール
女性は男子トイレに入らないで下さい
本日は、金曜日。
今日から、学校祭。
「理人、持ったか?持ったか?」
「持ってる持ってる」
「じゃ、行くぞ?…せーのっ!」
二人がかりで、一斉に持ち上げる。
桃李に頼まれていた、わたあめ作る機械。
朝イチで速攻届いたため、理人と二人で正面玄関口へ向かい、運ぶこととなった。
「…これ、あんまり重くないな」
「二人がかりでだからじゃない?…あ、階段昇るよ」
階段を一段ずつ昇って、四階までせっせと運ぶ。
「さっき夏輝に手を振っていた女子たち誰?」
「知らねえ」
階段を昇っている最中、顔も見たことない女子の集団に手を振られた。
知り合いでもないのに、リアクションに困り、スルーした。
「俺じゃなくて、おまえじゃね?」
「え、俺も知らないし」
「あ、そうだ。前夜祭って何時からやんの?」
「午後3時だって」
「おまえ…いつ女装すんの?」
「プログラムの順番前が中盤だから、始まるまでにはもう準備終わらせる」
理人のチアガール姿、楽しみだわー。
あのムキムキの太い足を丸出しにするのか。
もう、それだけが楽しみすぎる。
「写真撮りまくってやる」
「可愛く撮ってよ?」
「ぶはははは」
学校祭初日だからか、校内がちょっと慌ただしくなる。
行き交う人、人、生徒みたいな。
学校祭は本日から三日間で。
金曜日の今日は、準備と夕方から前夜祭。
土曜日は校内の生徒のみの公開。
日曜日は一般公開と、夕方から後夜祭。
後夜祭では、家政サークルのファッションショーなどのイベントの後、グラウンドで花火打ち上げるらしい。
学校行事って、苦手なんだけど。
まあ、いつものようにそれなりに過ごすか。
理人のチアガール姿、それが一番の楽しみだけど…。
「…夏輝は、桃李のチアガールも楽しみにしてんじゃないの?」
「………」
はっきり言うんじゃない。
楽しみじゃないと言えば嘘に…いや、やめて。
照れるから…。
「桃李、練習の成果あって、上手だよ?ダンス」
「ふーん…」
アイツも頑張ってきたんだもんな。今日のために。
先週のブッ倒れて昏睡したあの日からは、無理なく頑張っているのか、寝不足な様子もない。
昨日も楽しそうにしていたし。
あれは、パンを作っている時のテンションに近い。
学校であんな姿が見られるとは、思わなかった。