王子様とブーランジェール



「…お。柳川、着替えたの?」

「そうー!…どう?」

チアダンスをやっている柳川。

女子の割には背も160㎝超えと高くて、健康的にスラッとしている。

餅は餅屋というか、衣装もサマになってる。



「すげえ似合ってる。スタイルいいな」

「…えっ」



…ん?

柳川は、何も言わなくなってしまった。

あれ。何かマズイこと言ったか?



「も、もうっ!…竜堂くんってば!」


腕をバシッと叩かれる。

…え?



すると、後ろで咲哉がボソッと呟いた。



「おいおいおい…胸キュンシアターを地でやるなっつーの」

え…そういうこと?

ただ似合ってるって言っただけなのに。

「ナチュラルにサラッとやってしまうあたり、さすが王子様だな…」

わからん…。




「…あれ?桃李、どうしたの?」



すでにチアガール姿の尾ノ上さんが、LL教室のドアを開ける。

その名前を聞いてドキッとしたのは言うまでもない。

そうだ。桃李もこの姿に…。

ちょっと、楽しみだけど…いや、やめて。

照れる。照れる…!


しかし。出てこない。

尾ノ上さんがドアを少し開けて、中の桃李とこそこそ話をしている。

どうした。



「…え?出られない?…何で!」

「み、み、美咲ちゃん…わ、わ、私、太ったみたい…」

「はぁっ?!サイズ合わせてんのに、んなバカな!」

「お、お、お腹、出てる…」



何をやっとるんだ。

早く出てこ…いや、出てこないで。照れるから。

いや、でも、みんな待ってるから早よ出てこんか。

いや、でも…あーっ!俺、どっち!



すると、理人がそこへ現れた。

女装全開の理人。

シャバを歩けば、ほぼ変態だ。



「尾ノ上、どうしたの?」

「あ、和田くん!何か桃李出てこないの。もうっ!」

「………」



そして、ヤツは何を思ったのか。

その閉められたドアを開けてしまう。

顔だけ突っ込んで…中にいる桃李と話しているようだ。

小声で話していて、うまく聞こえないが。

断片的に、「お腹なんて出てないじゃん」とは聞こえた。

お腹?

桃李、あんなに痩せてるのに腹が出てるってか。

女子ってどうでもいいこと気にするよな。

っていうか、理人。

桃李の腹を見たのか…!



そのうち、理人はドアの中へ入ってしまい。

桃李の手をひいて、出てきた。



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