王子様とブーランジェール




「みんなごめんね?桃李、衣装がへそ出しだってわからなかったみたい」

変態の格好をした理人が、桃李と手を繋いで参上した。

手を繋がれて無理矢理引っ張り出された桃李はモジモジとしながら、隣に立っている。



「だからお腹出てるってか」

「もう!桃李ったら、ちゃんと確認しときなよ!」

「ご、ご、ごめんなさい…」



桃李、おまえはバカか。

本当に、バカか。



だが…。



その姿を横目でチラッと見る。



へそ出しにミニスカートのチアガールの衣装。

お腹は出ておらず、細いし。

手も足もほっそりとしている。

スカート短い。見えそう…。

胸…よく見るとデカいわ。

あぁ…真っ先にそこを見てしまうとか、男の悲しい性だよ。

髪も巻いてもらったのか、くるくるしていていつもと違う。

化粧もしてる…。



(かわいい…)



予想通り、やられた。

そのまま、俺んちに来てくれ…!



直視できない。

目を逸らしてしまい、また一人壁ドン状態となった。

「あんた何してんの。柳川にあそこまで言えるのに、神田には何で言えないの」

一人壁ドンしている横で、咲哉が小声で呟いた。

バカヤロー。

俺的に、柳川とは別格だ…。

かわいい…。

かわいい…。



「じゃあ、出陣だぜぃ?ギャル達!楽しんじゃいましょー!」

「おー!」



松嶋の声かけで、ダンスチームの皆さんは、体育館の中へぞろぞろと入っていく。

桃李も、理人に手を牽かれたままだ。

っていうか、手…手!

手をいつまで繋いでんだ!

理人、この痴漢が!

身なりだけでなく、行動まで変態か!

と、心の中で叫ぶ。



だけれども…。



「…あれ。夏輝、行かないの?」

「あ…先行ってて。トイレ行ってから行く」

「はいはい」

咲哉も後に続いて体育館へと行ってしまった。



(………)



誰もいなくなったその場。

一目散に、トイレに駆け込んだ。

そして、トイレ内のセンターテーブルに肘をついて頭を抱える。



どうする…どうするんだ!



あんなにかわいすぎるだなんて…!



顔が熱い。

顔がヤバいぞ。

こんなんで、公衆の面前に出られるか!



チアガール姿、見事にヒットした。

かわいすぎて、かわいすぎて、間近で見られない!

ああぁぁ…。


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