王子様とブーランジェール



変態のインパクトに押されてしまったが…その横で、桃李は笑顔になっていた。

終わったぞ。達成感か?

…よくやったな。

おまえにしては、頑張ったわ。ホント。




仙道先生の向こうにいる超美人は、ステージを見つめたまま、拍手をやめないでいた。

「頑張った、頑張った」

笑顔になっており、その横顔にドキッとさせられてしまった。

ち、ちくしょう。なぜ美人の笑顔って、人をドキドキさせる力があるんだよ。



笑い疲れて、一息つくが。

発表を終えた変態二名を含む女子たちが、ステージを降りてこっちに歩いてきている。

着替えのため、体育館を一回出るんだろうか。

俺達の横を次々と歩いて出ていく。



「…和田くぅぅーんっ!!」


そこへ、まゆマネが爆走しながら登場した。

スマホ片手に、鼻息が荒い。

まるでイノシシのようだ。


なぜか、超美人はとっさに俺と仙道先生の後ろに隠れていた。



「和田くぅぅーんっ!!待って待ってぇーっ!」

「あ、林さん」

イノシシのようなまゆマネは、突進するかのごとく、理人をあっという間に捕まえている。

「和田くん、和田くん!一緒に写真撮って!その姿のまま写真写真!お願ぁーい!」

「あ、いいですよ」

理人はドン引きすることなく、涼しい笑顔で答えている。

変態の格好をしたままだけど。

その見た目で普段と同じ振る舞いをするな。ギャップが笑える。

「ホント?やった!じゃあ明るいとこで撮ろ?」

そう言って、あっという間に理人を引っ張って出ていった。

まゆマネ、ホントに理人のことをお気に入りになってしまったか。



出ていく二人を目で追ってると、背中をツンツンとつつかれた。

振り返ると、いつの間にか超美人が俺の背後にいる。

一目を避け、俺の後ろに身を隠すように。

「ねえ、桃李呼んで」

「は?」

「桃李。呼んで呼んで」

「はぁ…」

人使い荒いな。

ワガママ美女か?

しょうがないので、列の後ろを柳川と歩いている桃李を見つけ。

目の前を通り過ぎる瞬間に声をかける。



「桃李!」

「は、はい!」


俺の声にいちいちビックリして立ち止まる。

辺りをキョロキョロと見回していた。


そのうち目が合って、存在に気付かれる。


「夏輝?」


気付くとすぐに、こっちにてくてくとこっちにやってきた。


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