王子様とブーランジェール




体育館の中、暗いし。

なんだか、疲れた…。



暗闇の中、座ると急に睡魔が襲ってきた。

まだステージ終わらなさそうだから、少し寝ても構わないだろうか。

立てた膝に肘をついてしまう。




そんな眠気いっぱいの中、彼女と先生たちの会話を思い返してみる。



仙道先生に騒ぐなと言ったり、ステージの女王とか言ってたな。

在学中は、有名な存在だったのだろうか。

あと、わかることと言えば。

彼氏持ち。しかも浮気されている疑惑あり。

糸田先生も知ってる…彼氏も卒業生か?

で、ガチバカ。



ぐらいだな。

わからん。



このことは、機会があれば、仙道先生にそれとなく聞いてみることとするか。

あまり気に止めないでおくか。

眠いし。



しっかし、糸田先生。

超美人のこと、めっちゃ可愛がってんな…。

普段の姿から見たら、あり得ないぞ…。

今度いじってやろうか…いじれるかな。

相手は糸田先生だぞ…?












体がガクッとして、ハッと目が醒めたと同時に。

額にガスッ!と、何かがぶつかった。



「…わっ!」

「痛っ…」



な、何だ?何だ何だ?!

突然のことで、何が何だかわからない。

頭を上げて、辺りをキョロキョロ見回す。

薄暗い体育館…ステージ発表、まだやってる。



えーと、何だっけ。

俺、何してた?えーと…。

寝てた?寝てたか…?寝てたな。



おでこ、何にぶつかった?




すると、俺の左隣で、額を押さえて顔を伏せているヤツがいる。



「い、い、痛い、痛いよぉー…」



おまえ…なぜ、ここにいる。



急に恥ずかしくなった。

額と額がぶつかったのか…!

危なっ…!



「桃李、何してんだ…」

「痛い…おでこぶつかっちゃったー。夏輝、急に倒れてくるんだもん…」

顔を上げて、額を撫でている。

あのなぁ…。



俺があのまま居眠りこいちゃって。

体がガクッとなって、桃李の額とぶつかった。

額と額がぶつかった。

って、いうことだよな…?



…額ぶつかるなんて、距離近っ!

相変わらず、距離感ないのか!こいつは!



「俺、寝てた…?」

桃李は頷いている。

「すやすや寝てた…」

「何分くらい?」

「私がここに来てからは5分くらい」

「起こせよ…」

ぶつかった額を押さえて、顔を伏せる。

「いや、起きるかなと思って…」

あのなぁ…。



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