王子様とブーランジェール




微妙なボケツッコミがありながらも、やたらとウケていた大喜利も終わった。

ステージ発表が全て終了して、ステージ上には実行委員である司会者が登場している。



『ステージバトル、全プログラム終了でぇーす!結果発表は後夜祭で!お楽しみに!』



引き続き、体育館の後ろで理人と座ったまま、ボーッと見ていた。



「これ、優勝とかあんの?」

「うん。一応ステージバトルだからね。優勝はクラス全員分の焼き肉食べ放題チケット、準優勝は、ハイターズ井花選手のクオカードだって」

「井花選手のクオカード?商店街の景品みてえ」

やっぱり焼き肉食べ放題か。

この高校では絶対の価値観があるようだ。



「帰り、ジム寄ってこっと」

「マジ?夏輝、タフだねー」



もう、前夜祭も終わりだろう。




…と、思っていた。



『これにて、星天祭の前夜祭、終了ー!…』

司会者がステージ上から手を振る。



だが…。



『…じゃないだろうがぁーっ!…バカめ!』




体育館が一瞬で静まり返った。

この星天高校では、知らないヤツはいない暴れん坊将軍の登場に。

その『バカめ!』の口癖を耳にすると、もう速攻誰だかわかってしまうのが、イタイ。



その姿を晒し、ステージ上に現れる。

狭山だ…!




な、何だ?!

なぜ、この女がステージに乱入する?



すると、司会者の女子も口裏を合わせていたのか?



『…そうでーす!これで終わりじゃありませぇーん!みんな帰らないでね?』

『そうだ!帰るなバカめ!お楽しみはこれからだ!』



ステージ上に並ぶ、狭山と司会者の女子。

その光景に、体育館中どよめいている。



「狭山さんだ。何すんのかな」

驚く様子もなく平然としている理人。

平和でよろしい…。

俺なんか、悪いことが起きる気がしないぞ。

周りも、「うわっ。狭山だ」「今度は何やらかすんだ?アイツ」と、ざわざわしている。




ステージ上の狭山はマイクを持っている。



『…おまえらぁーっ!一年はお初にお目にかかるヤツもいるなぁ?あぁ?…私が!私が狭山エリだ!泣く子は黙るどころか、泣き叫び死んでしまう、狭山エリだ!以後覚えとけ!』

『こちらは、今年の学校祭特別委員の3年4組狭山エリさんでーす!』




キャッチコピーが、何とも言えず、すこぶる恐ろしい。



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