王子様とブーランジェール
それに、特別委員?
狭山みたいなヤンキーが委員?
こいつ、委員なんてガラかよ。
もう、苦笑いしか出てこない。
ステージ上でマイクを片手に、腰に手を当てて偉そうな態度でいる狭山。
再び喋り出した。
『…えー。諸君。この度、この学校祭を開催するに当たってなぁ?アンケートを取ったのを覚えているかバカめ!』
再び、体育館はざわついた。
アンケート…よくわからないし、興味がないので白紙で出したような気がする。
『…その中でなぁ?《四天王デスマッチとは何ですか》《四天王デスマッチは復活しないのですか?》《四天王デスマッチを見てみたい》などという、回答が多く寄せられた…特に男子生徒からなぁ?あぁ?』
体育館内は、更にざわつく。
仙道先生の先日の話を思い出した。
『前夜祭で、デスマッチ?!』
あれ、他にも知ってるヤツいたのか。
相当な伝説なんだな。
生徒らの反応を見て、狭山はニヤリと悪魔のような笑みを浮かべる。
『…てなわけでな?…この狭山エリ様が!…親父のポケットマネーを頂戴して企画してやったぞバカめ!…《学校祭を盛り上げ、高校生活をエンジョイさせる慈善事業》としてなぁ?!』
出た、慈善事業…。
狭山の親父、実は慈善事業なんてどうでもいいんじゃねえのか?なんて、思ってしまう。
桃李にブラジャーを買い与えるとか、誰の利益になり、何の発展を目指すのかわからない事業ばかりじゃねえか。
そして、前に出て、マイクを通して吠えた。
『前夜祭デスマッチ、リバイバルだ!…おまえら、格技場に集合しやがれ!バカめ!』
は?マジ…?
『その四天王デスマッチ、今年、リバイバルすると言うのは本当かにゃ?』
松嶋の聞いていた噂は、ホントだったワケ?!
最初は、半信半疑でどよめいていた体育館内の生徒たちだったが。
「マジか…?」
「おい、行ってみようぜ!」
と、男子生徒を中心に早足で次々と体育館を出ていく。
そのうち、民族大移動のようになっていた。
うわっ。すげえ。
「夏輝、とりあえず俺達も行ってみるか」
「あぁ…」
格技場は、体育館を出てすぐ右に階段がある。
そこを上がり、体育館の階上が格技場となっている。
普段、空手部、柔道部、剣道部がローテーションで活動しており、この高校は柔道の授業もないので、俺達が足を踏み入れることはあまり無い場所だ。