王子様とブーランジェール
階段は、生徒の波で多少渋滞となっている。
理人と「明日何する?」と、世間話などをしながらゆっくり上がっていった。
やれやれ。狭山のヤツ。
随分デカいことしちゃうんだな。
四天王デスマッチリバイバル?
四天王もいねえのに。
誰が参加するんだっつーの。
…あ、ひょっとして、狭山自身か?
金属バットを振り回して?
いやいや。教師陣があれを黙って見過ごしていられるワケがない。
ヤクザを半殺しにしちゃうって話だぞ。
どうなるんだかな。
格技場にようやく入ることが出来たが。
そこには、思いもよらない驚愕の光景だった。
「うわ…」
「…マジか!」
格技場のど真ん中には。
背の高さより少し高めの、金網で囲まれた八角形のリングが…!
総合格闘技のケージ、オクタゴンだ…!
直径も9m弱ほどあり、格技場いっぱい。
ケージの周りには、先に駆け付けた生徒たちでぎっしりだ。
かなり本格的だぞ。
まさか、昔もこんな感じだったのか?
誰もいないリングの真ん中には、《SEITEN DEATH-MATCH》と、ロゴが書いてある。
かなり金かけたな…。狭山。
「本格的だね」
「昔もこうだったのか?」
人だらけの格技場内を、端を歩きながら、座る場所を探す。
とは言っても、マジで人だらけ。
結局、体育館同様、隅の方に二人並んで腰かける。
「こんな会場見ると、早くジム行ってスパーしてえな」
「夏輝、参加してくれば?」
「冗談やめろ。オーナーに怒られる」
すると、またしてもあの暴れん坊…いや、イバりん坊将軍が登場した。
マイクを持って、ケージの傍にいる。
『…準備は良いか?生徒諸君…』
そして、なぜかドヤ顔だ。
『どうだ?このオクタゴンは?…これは、14年前に行われていた四天王デスマッチのリングを完全再現したものだ』
観客である生徒たちは、またしてもどよめいているが、先ほどに比べて、感嘆の声も混じっている。
現実味を帯びてきているのか、エキサイトしかけているヤツらがいるようだ。
『なぜケージなのかというと、観客である生徒の安全面を確保するためと…舞台に立った選手が逃げられないようにするための物らしい…まさしく、死闘、だな?』
そして、鼻で笑う。
『…私はな?このデスマッチを完全再現するべく、実際14年前にデスマッチを見ていた者、実際に参加した四天王から話を聞いてきたぞ?バカめ!』