王子様とブーランジェール
『現在は、我が校のサッカー部に所属!ジュニアユース全国優勝チームの実力を引っ提げて、一年生ながらにもレギュラーを獲得し、インターハイ出場に貢献!』
え…。
まさか、そんな…。
『…ですが!それは表の顔なのか?!サッカーと並行して小学5年よりキックボクシングを始めており、昨年ジュニアユースを引退後に挑んだ大会では、初参加にして初優勝という、とんでもない経歴の持ち主です!』
これ、ひょっとして…。
俺のことじゃないでしょうか…。
『…青コーナー!G-hitキックボクシングアマチュア大会、男子Aリーグバンタム級チャンピオン!…サッカー部所属、1年3組、竜堂…夏輝ぃーっ!!』
脳内フリーズした。
そして、今一度。
隣にいる、理人に確認する。
「…竜堂って…俺だよな?」
「だって秋緒いないじゃん。おまえじゃね?」
そうか…。
(………)
「…あぁっ?!何だってぇっ?!」
思考停止していたが、自分の今置かれている立場を一気に理解してしまった。
今、俺の名前…俺を呼んだよな?
何?!
高瀬の相手…俺?!
俺?!
脳内、フリーズから一気に混乱だ。
なななな…!
「…夏輝!」
このタイミングで。
潤さんが向こうから俺の名前を呼んで走ってくる。
傍にやってきた。
「じ、潤さん、い、今の…」
「…もう、探したよ!…行くよ!」
えっ…!
行くよ!って、やっぱりそういうこと?!
「ち、ちょっと!ちょっと待ってって!…これ、ヤバい!ヤバいって!」
「え?」
潤さんは、俺を見つけるなり腕を掴んで、ケージの方へと引っ張る。
しかし、ちょっと待て!
いろいろ言いたいことは、山ほどあるが。
問題も山ほど。
…あーっ!何から言っていいかわかんねえ!
「潤さん!これヤバいって!対外試合っつーか、こんなケンカ試合したってオーナーに知れたら…」
「それは大丈夫だから!」
そう言って、潤さんは肩に下げている紙袋に手を入れている。
「えっ…」
出てきたものは、俺の私物だった。
俺がジムに置いといている、道具小物一式を入れたポーチ…!
「オーナーの許可は昨日取ってきたから。オーナーの試合観戦を条件に」
「えぇっ?!」
な、何だって!