王子様とブーランジェール
オーナーの試合観戦を条件にって…。
…オーナー、いるの?!
どこに?どこにいるんだ!
真っ先に、その姿を探す。
何で、何で高校の学校祭にいるんだ!
だが、格技場内は生徒だけではなく、大人も数人いて。
人だらけで、どこにいるかわからない!
「オーナーも14年前の四天王デスマッチのことは知ってたみたい。『負けたら殺す!』って言っておけって」
「何っ!」
そう言って、潤さんは俺のポーチを開ける。
中から出して、手渡してきたものは。
俺のオープンフィンガーグローブ…。
嘘、嘘でしょ…。
っていうか、俺、さっきから、「はぁ?」とか「何?!」とか「え?」とか「嘘!」とかしか言ってない…。
格技場の端でモタモタしていると、マイクを通した声が、響き渡った。
『…竜堂、どうした…?』
狭山だ。
俺の居場所に気付いたのか、こっちを見てニヤニヤしている。
こいつ…!
『…さっさとリングに上がってこい?…それとも何だ?ビビってんのか?怖じ気ついたのかコラァ!』
くっ…!
オーナーの見てる前で、全校生徒の前で…!
イラッときた。
「…ふざけんなよコラァ!聞いてねえぞってこんなの!」
瞬時に頭にきた俺は、生徒の波を掻き分けて、ずかずかと狭山のいるケージの方へと足を進める。
そんな狭山の様子は、なぜか喜んでいる。
『…あぁ?聞いてるワケないだろうが。言ってねえし?』
「は、はぁ?どういうつもりなんだよ!」
『予めおまえに言っておいたら、やらないだの無理だの言い出して屁理屈こくに決まっておるだろうが!バカめ!』
ちっ…いや、そうだ。
こんな公認ケンカのような催し、絶対反対だ。
『竜堂…おまえ、高瀬としょっちゅうモメてるからなぁ?だから!決着の場を設けてやったのだ!有り難く思え!』
そう吠える狭山の後ろには、ケージの中にいる、高瀬がこっちを見ている。
野郎…知っていたのか。
このゴリラが!
『さあ、竜堂…上がってこい』
これは…逃げられない。
ここまでお膳立てしてあって、オーナーもみんなも見ている。
もちろん、桃李だって…。
『…ここで、思う存分、殺し合え!!』